2018.06.13 Wednesday

『インビクタス 負けざる者たち』国の魂が一つになる時

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    冒頭、白人達がラグビーをしていて、通りを挟む向かい側で黒人の子供達はサッカーをしている場面が映される。

    突然、黒人の子供達は大号令を上げて道を行く車を見送る「マンデラ!マンデラ!」何事かと尋ねる白人達に対してラグビーチームの監督は「テロリストが釈放されたのさ、この国の終わりの始まりだ」と告げる。

    この国、とは南アフリカ共和国であり、マンデラとは後に大統領となるネルソン・マンデラ

    (モーガン・フリーマン)である。彼はアパルトヘイト政策などへの反対活動を行ったことにより、27年もの間、

    刑務所に投獄されていたのだ。

    彼の初登庁の日に、それまでの大統領に仕えていた白人達は白人に対する報復人事が行われるのではないかと

    戦々恐々としていた。しかし、彼が最初に全職員を集めて話した言葉は、「自らの意志で辞めるのは構わないが、
    私が人種や皮膚の色によって不平等な扱いをすることはないと宣言しておく」というものだった。  

    そして、宣言どおりに彼のボディーガードチームにも元・公安の白人達が編入されることになった。
    元々ボディガードをしていた黒人のリーダーが大統領に抗議に行き、「奴らは元々敵のようなものだ」と話すが

    マンデラは「大統領のボディーガードが黒人ばかりだと白人達が萎縮してしまう。君たちは顔なのだ」と伝える。

    不服ながらもボディーガードの詰めている部屋に戻ったリーダーは大統領のスケジュールを白人のボディーガード達

    と共に確認する。白人達はスケジュールの過密さに驚き、「俺たちはトイレに行く時間すらもないじゃないか」と

    冗談混じりに皮肉を言う。

    ある日、大統領には南アフリカ代表のラグビーチーム、チームスプリング・ボクスと強豪国であるイングランドとの試合開始前の挨拶を担うという公務が入っており、ボディーガード達と会場に向かう。

    ラグビーはアパルトヘイトの象徴だという印象が色濃く残っており、ボディーガードの黒人達と白人達の間でも

    好みは真っ二つに別れているようだ。実際、チームに黒人選手は一人しかおらず、後は全員が白人である。

    マンデラ自身も監獄にいた頃、黒人の囚人達は全員スプリング・ボクスの相手チームしか応援せず
    白人の看守達だけがスプリング・ボクスを応援していたと話す。
    しかし、翌年、南アフリカ共和国ではラグビーのワールドカップが開催される予定となっており、マンデラは

    ラグビーを全面的に支援することを思い付く

    だが、マンデラが属する政権与党であるANCでは、イングランド戦で大敗を期したスプリング・ボクスに対して

    改革を実行すべきだという意見が圧倒的多数を占めていて、チームカラーを一新し、チーム名も変更して
    新たなチームとして生まれ変わらせるべきだ
    、という提案が可決されてしまう。

    その報告を聞いたマンデラは直ちにANCの会議会場に向かい、チームをこのまま維持することを提案する。
    「我々黒人は確かに政権与党を担っていて、人数も多い。だが、依然として経済や軍事力は少数派の白人が

    握っている。今、報復を行って白人と黒人の間にある溝を深くするよりも、融和を目指すべきだ。」と

    諭し、改めて決を採ることにした。

    結果は僅差だったが、スプリング・ボクスのチームカラーとチーム名は無事に維持されることとなった。
    帰り道の車で秘書がマンデラに今回の件は政治的な打算だったのか、と尋ねると、マンデラは

    人間的な打算だよ」と答えた。白人と黒人が対立しない虹の国を目指すことが必要だと言う。

    マンデラは更に支援を続けようと、スプリング・ボクスの主将、フランソワ・ピナール(マット・デイモン)を

    茶話会に招き、彼を激励した。マンデラは孤独な獄中生活を耐えることができたのはある詩のお陰だった
    ピナールに伝え、チームを鼓舞するために尽力して欲しいと伝えた。

    その後、マンデラは、スプリング・ボクスに対して黒人地区を回ってラグビーの指導を行って欲しいと依頼する。
    チームの監督からこの話を聞いた代表選手達は「余計なことに時間を割かれたくない」と批判的だったが、

    ピナールが彼らを説得し、キャンペーンの一環として黒人地区を回ることになった。

    黒人地区の子供達は選手達が来ると真っ先に唯一の黒人選手であるチェスターの元に駆け寄った。他の選手達は
    苦笑いをしていたが、交流を深める内に、チームメイト達全員が打ち解けていった。
    その様子はテレビでも放映され、黒人と白人の融和を強く印象づける内容となっていた。

    この内容を皆に見せたマンデラは満足気に、「今、我々国民には誇れるものが必要なのだ」と言う。

    秘書がラグビーは政治的な問題ですね?と尋ねるとマンデラは「そのとおり、政治的な打算だ」と笑顔で答えた。

    彼らは苦しいトレーニングを続け、とうとうワールドカップの日を迎えた。世間は彼らの実力に懐疑的であり

    初戦突破も難しいのでは、というテレビ解説者もいた。しかし、蓋を開けてみればスプリング・ボクスは
    チーム力を遺憾なく発揮し、見事初戦であるオーストラリア戦に勝利することができた

    バーで祝杯を挙げる選手達だったが、ピナールが全員に「明日は朝6:00からランニングをするぞ」と告げ

    盛り上がりもそこそこに皆が床に就くことになった。翌日、チームが集合してランニングしながら、ピナールが

    船着き場に向かっていくと、そこにはピナールのサプライズで船が用意されていた

    船に乗って彼らが向かったのは、かつてマンデラが収容されていた刑務所だった。当時の独房が再現されている

    という部屋にいくと、そこには人一人が寝られる程度の僅かなスペースにペラペラの毛布が敷かれているだけ

    だった。ピナールは独房の中に入り、思いを馳せる。

    試合前にピナールがマンデラから渡された紙には彼が救われたという詩が書かれていた。
    インビクタス(ラテン語で屈服しないという意味)というその詩のなかには「我が運命を決めるのは我なり、

    我が魂を制するのは我なり」 という内容が書かれていた。

    このちっぽけな独房に27年間も収容されていながら、希望を捨てなかったマンデラの姿に心を動かされたピナールは

    必ず残りの試合も勝利すると心に誓った

    続く翌日以降の試合でもスプリング・ボクスは快進撃を続け、とうとう決勝進出を果たすことになる。

    決勝戦のチケットは白人が大部分を購入しているというが、実際に決勝戦が始まると、町中の至る所で
    国民達がスプリング・ボクスを熱心に応援していたのだ


    黒人達もスポーツバーに入りきれないほどに集まり、テレビ画面に齧り付いていた。また、白人と黒人がどちらも

    集うスポーツバーがあったり、警備をしている警官達もラジオの試合中継を熱心に聞いていた。

    さらには、ゴミ集めをしているフリをしながら警官達が聞いているラジオを盗み聞きしている黒人の少年もいた

    決勝戦の相手はニュージーランドのオールブラックスというチームで世界一の呼び声高い強豪チームである。

    スプリング・ボクスは敵に先制点を赦すが、一進一退の攻防を繰り返す大接戦となり、試合は延長戦にもつれ込む
    延長戦でスプリング・ボクスはリードを守り、なんとワールドカップで優勝を果たしたのだ

    結果を目の当たりにした国民達は熱狂的な喜びを表現し、国中がお祭り騒ぎで盛り上がった。初めは黒人の少年を
    邪険にしていた警官達もいつしか共に試合に夢中になり、優勝が決まった時には喜びのあまり少年を胴上げまで

    していた

    全国のスポーツバーで、家庭で、路上で、黒人も白人も喜びに沸き、場所によっては互いに手を取り合い、

    さらには抱き合いながらその感動を分かち合った


    優勝後のインタビューでピナールは、会場にいる6万人の応援のお陰ですね、と声をかけられると「はい、でも

    それだけじゃありません。全国の4300万人の国民のお陰です。」と答えた。
    表彰式でマンデラは優勝カップをピナールに手渡し、「祖国に誇れるものを創ってくれた」と伝えると
    ピナールは「誇れる祖国にしてくださった」と答える。

    大統領は会場を後にして車で帰路に就こうとするも、街中がごった返していて車はほとんど進めない。
    ルートを変更しますか、と問われた大統領は「急いでいない、ゆっくり行こう」と穏やかに答えた。


    〜感想〜

    本作は実話が元になっているという。ワールドカップの開会式の前に飛行機が会場の上空に急接近し、

    その底面にはスプリング・ボクスへの応援メッセージが書かれている、というシーンがあったのだが

    なんと、このシーンも実話に基づいているというのだから驚きだ

    映画のなかで描かれるマンデラ大統領の「報復ではなく、融和を目指すのだ」という一貫したメッセージは

    非常に強烈で、27年間もの抑圧された監獄生活を経た人間の言葉と思うとその重みは凄まじい

    だが、物語のなかでも黒人社会と白人社会はまだまだアパルトヘイトの名残を残していることが示唆される。

    荒れた荒野のような土地にあばら屋が建ち並んでいる映像と、近代的なビルが建ち並んでいる映像が交互に

    映される場面があり、これは黒人地区と白人地区の明確な格差を如実に表している

    また、決勝戦のスタジアムはほとんどが白人で埋め尽くされている、というのも恐らく経済的な事情によるもの

    だろう。裕福な白人と違い、黒人は高価なチケットを買えないため、スポーツバーで観戦するしかなかったのだ。

    アパルトヘイト政策は人道的見地から絶対に許される政策ではないが、その撤廃により犯罪率の急騰などの

    課題も顕在化していることは周知の事実であろう。南アフリカ共和国の異常な犯罪率の高さは経済格差が

    大きな要因とも言われている

    皮肉にも、一つの国として黒人も白人もその国民となったことで、経済格差が大きな者同士が隣に住むことになり
    その不満から犯罪が増加してしまっているのかもしれない
    。さらには、隔離政策時代にまともな教育を受けていない

    黒人達は、たとえアパルトヘイトは廃止されても行く宛が無く、路頭に迷っているという。
    (2005年時点での失業率は25%を超えている)

    まだまだ、過去の負債を抱えていて全てが良くなるといった状況とは決して言えない南アフリカ共和国ではあるが
    この物語で描かれたラグビーワールドカップでの黒人と白人の一体感は紛れもない事実だと思う。


    黒人も白人もワールドカップ優勝の瞬間、確かにその“魂”は一つになったのだ。

    2018.06.10 Sunday

    『グラン・トリノ』退役軍人の頑固老人が育む人間関係とその選択

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      グラン・トリノとはフォードのトリノという車種のうち、1972年〜1976年の間に生産されたもの

      言うそうだ。本作は映画のタイトルともなっているその車を愛用する老人、ウォルト・コワルスキー

      (クリント・イーストウッド)が主人公である。


      物語の冒頭は、彼の妻が亡くなり、その葬式が行われている場面から始まる。

      彼は気難しい老人のようで、二人の息子達や孫との関係もあまりよろしくないようだ
      葬式の場にヘソ出しピアスでやってくるような孫娘に対して、冷たい目線を投げかけていた。

      息子達は、頑固者の彼が一人で自宅で暮らしていくことを心配に思っているようだ。
      葬式が終わって自宅に戻ると、葬式の場での息子達の態度や、周辺の家に近年移り住んできた

      東南アジアからの移民達に対する愚痴を言いながら煙草を燻らしていた。


      隣家に暮らすモン族の少年が草むしりをしていると、そこに彼のいとこだといういかにも柄の悪い

      男達が重低音を鳴らしながら車で訪ねてきた。そして、その場にいた少年の姉である女性にちょっかいを出しつつ

      少年に「仲間だろ?」と声をかけ、車に乗せて走り去っていく

      ある朝、不審者の気配に気づいたウォルトは目を覚ますと、ガレージで自身のグラン・トリノを盗もうとしている

      モン族の少年、タオを発見する。ウォルトは銃で脅して彼を追い払うと、更に怒りを募らせる。

      彼が、何もかも納得のいかない環境に不満を募らせながらここで日々を暮らしていると、息子夫婦が訪ねてきた。

      彼らはウォルトのことを施設に入れようと説得しにきたのだが、当然ながらウォルトは怒って彼らを

      追い返してしまう。夫婦は愚痴を言いながら、「やるべきことはやった」と言って帰って行く。

      そして、隣の家に不良達がやってきて騒いでいるのを発見し、ウォルトは正義感に駆られたのか、彼らを追い払う

      また、車で出かけているとその道中でタオの姉であるスーがボーイフレンドの白人と一緒に黒人達に絡まれている
      ところに出くわし、そこでも黒人達を追い払い、スーをトラックに乗せて家まで送り届けることにした。

      車中でスーとの会話を楽しむウォルトは彼女のことが気に入ったようで、「お前は良い子だが、弟はダメだな」と
      話すと、スーは「彼は本当は頭が良いけど、今は悩んでるの」と言った。モン族は女の子は大学に行くが

      男は刑務所に行く人間が大半なのだと言う。

      そんなある日、隣家が何やら騒がしいと思っていると、スーがウォルトの家を訪ねてきて、BBQに来ないかと誘う。
      一度は断るウォルトだったが、スーの熱心な誘いを断り切れず、隣家のホームパーティに出かけることにする。
      隣家の祖母は彼のことが嫌いなようだったが、温かく接してくれる人達もいて、「実の子供達と会っているよりも

      この家にいる時の方が孤独を感じないようだ」と言って穏やかな時間を楽しむことができた。

      地下に行くと、若者達が集まっていて、その中にタオもいた。タオはその場にいる女の子のことが気に入っている

      ようだったが、その子の周りには既に男が三人も固まっていて、一人で途方に暮れていた
      ウォルトはその女の子に話しかけられると、好感を得たようで「面白い人ね」と言われる。

      女の子が上に行ってしまうと、他の男達も付いていき、タオはその場に取り残されてしまった。
      ウォルトは彼に話しかけると、「彼女はお前のことをチラチラ見て気に入っていたようだったのに、お前が

      行動を起こさないから三人組に取られてしまった」と言い、意気地のない男だと言って馬鹿にしたように話す

      次の日、ウォルトはスーとその母親から呼び出されると、車の件のお詫びとして一族の筋を通すために
      タオを働かせるから好きに使って欲しい
      、と頼まれる。ウォルトは断ろうとするが、断られることは侮辱だ、と

      言って女達は聞く耳を持たない。ウォルトは「車を盗まれそうになったのは俺なのに何故悪者にされるんだ」と
      不満そうだったが、女達のしつこさに渋々受けいれることにした。


      次の日、タオが家にやってくるとウォルトは得意なことは何かと聞くが、タオはわからない、と言う。

      呆れたウォルトはタオに「木にいる鳥の数を数えてくれ」と言って家に帰ってしまう。

      だが、タオは翌日ものこのことやってきたので、ウォルトは何をやらせようかと悩んで、前々から気になっていた

      という向かいの家の屋根を直させることにした

      仕事をしっかりとやり遂げたタオに、ウォルトは満足気だった。徐々に関係は改善していき、タオは気軽に
      ウォルトの家にやってきて「配管を直して欲しい」と言うほどに打ち解けていた。
      その作業のあと、タオはウォルトのガレージに来ると、並ぶ工具の数に驚きを隠せない。

      そして、タオは不良達にテストと称してグラン・トリノを盗んでこいと言われていたことを明かす
      それを聞いたウォルトは驚きを隠せず「なんて奴らだ」と言い捨てた。

      タオは「俺はこんなにも工具を集めることはできない」と言い、ウォルトは「当然だ、50年かけて集めたんだ」と

      返す。タオは「俺を雇ってくれるようなところはなくて、仕事がない」と言った。ウォルトは「建設関係なら

      コネがあるから頼んでやろう」と言って職の世話をすることを提案する。

      ウォルトはまず、タオを連れて床屋に行き、「お前はまず男らしくすることが必要だ」と言って、床屋の親父との

      会話を見て学ばせようとするが、二人はその仲の良さからか、暴言とも聞こえるような汚い言葉を掛け合う。
      それを真似したタオは床屋の親父にお叱りを受け、初対面の人間には彼女や車や仕事の話をしろと言われてしまう。

      しかし、タオは「彼女も車も仕事もないんだ・・」と肩を落として言う。呆れた二人はそんなことは言うんじゃない

      と言い、「車の修理代が高くてやってらんねーよ」といった雑談をするんだ、とタオに伝える。

      その後、ウォルトとタオは建設会社に面接に行き、扉の前でウォルトはタオに軍手を渡し、「これをポケットに入れておけ」と告げる。二人は中に入って、ウォルトがタオを紹介すると、建設会社の男に「車で仕事に来るのか?」と
      聞かれたタオは「車を持ってないからバスを使う」と答えた。

      建設会社の男は訝しげに「車を持ってないのか?」と聞くとタオは特訓の成果か「ガスケットの修理に2200ドルも
      取られそうになってさ
      」と言うとその男は「俺も最近車の修理には3200ドルも取られたんだ、クソ食らえだよ」と

      言って、「こいつはなかなか良さそうだ」と言って採用が決まった。

      ウォルトはタオと工具用品店に出かけると「給料で返すんだぞ」と言って、工具ベルトなどの必需品を一通り

      買い揃えてやった。タオが「工具がないよ」と言うとウォルトは「ガレージから好きな物を貸してやる」と言って

      太っ腹な男らしさを見せつける。

      何日か働く内に男らしくなって行くタオだったが、ある日の帰り道に不良達に襲われてしまう。
      テストが失敗したことの落とし前だと言う。抵抗するタオだったが、左頬に煙草を押しつけられて根性焼きを

      入れられてしまう

      打ちひしがれたタオがトボトボと歩いていると、ウォルトと出会い、話しかけられる。

      タオは根性焼きの跡を隠そうとしたが、不審に思ったウォルトに発見されてしまう。

      憤慨したウォルトは不良達の家に行き、一味の一人を襲ってボコボコにした後、「タオに手を出すな!」と言った。

      すると、夜中に車に乗った男達が報復にやってきて、隣家に向かって銃を乱射する光景を見たウォルトは急いで

      隣家に無事を確かめに行った。タオが首に傷を負っていたが、大したことはなかった。スーの姿がなかったことから

      ウォルトは「何処にいるんだ!」と言うが、タオは「叔母の家に行っているから大丈夫だ」と答える。

      不安を拭いきれなかったウォルトは「電話して確認しろ」と言い、タオが連絡をすると、スーは叔母の家には

      行っていないと言う。一同は顔面蒼白になりながら無事を祈ろうとするが、その時、顔から血を流したスーが

      玄関から入ってくる。その姿は一目で奴らに乱暴されたことが明らかだった。

      家にやってきた神父によると、スーは入院を余儀なくされ、タオは怒りを隠しきれないようだったという。
      彼ら一族は口が堅く、今回の件について誰もが口を閉ざしているという。

      ウォルトは奴らがのうのうとしている限り、スーやタオに安息は訪れないと確信する。

      ウォルトはスーツを揃え、全く行っていなかった教会に出向いて懺悔をした

      懺悔の内容は、「最高の妻がいながら別の女とキスをしてしまったこと」、「息子達との距離の取り方がわからず

      良い関係性を保てなかったこと」などで、拍子抜けした神父は思わず「それだけ?」と聞き返すほどだった。

      家に戻ったウォルトをタオが訪ねてくる、「今すぐ奴らを殺しに行くんだ!」と息巻くタオにウォルトは落ち着く

      ように諭し、計画を慎重に考えているから夕方にまた来るよう伝える。
      夕方に訪ねてきたタオに地下室の勲章を見せながらウォルトは朝鮮戦争時代の記憶を語る。

      「俺はある作戦で敵の拠点を攻撃したが、生き残ったのは俺一人だった、それでこの勲章をもらったんだ」と

      言い、その勲章をタオにやる、と告げて先に地下室を出た。タオが出ようとすると、ウォルトは地下室の扉を

      締めてしまっていた。「開けてくれ!」と叫ぶタオにウォルトは告げる。

      俺がその作戦で殺したのはお前のような小さな子供だった。最悪だ。その作戦で勲章を得るなんて輪をかけて

      最悪だ。今でも毎晩夢に見る。人を殺すというのはそういうことなんだ。」叫び続けるタオを置いて

      ウォルトはその場を去る。

      ウォルトは最後にスーに電話をかけ、タオを閉じ込めた鍵の場所を伝えて家を出る。
      スーは急いでタオを助けに向かうが、ウォルトはもう既にその場を去った後だった


      不良達の家に着いたウォルトは堂々と家の前に立ち、不良達に声をかける。不良達は全員が銃を持って

      ウォルトに銃口を向けていた。ウォルトがポケットに手を入れて煙草を取り出すと、全員が一気に照準を合わせた

      「ビクビクするな」と言ってウォルトは火を貸してくれ、と言うが、誰も動かない。

      「じゃあ、自分の火を使おう」と言ってウォルトは懐に手を入れ、一気に引き抜いた。

      不良達は一斉に射撃し、ウォルトを撃ち殺したが、彼の手に握られていたのはジッポのライターのみだった

      警察がやってきて、不良達が次々に逮捕されていたところにスーとタオも辿り着く。
      警察官に詰め寄り、状況を聞くと、「目撃者がいるが、ライターを取り出そうとしたら一斉に撃たれたんだ。

      全員長期刑を受けることになるだろう」と言う。

      ウォルトの葬式にスーとタオは民族衣装を着て毅然とした態度で臨む。彼らの堂々とした姿はウォルトへの

      敬意が如実に現れているように見える。一方でウォルトの家族達は相も変わらず相応しくない姿だった。

      葬式の後に弁護士が遺言を読み上げるが、家は妻の望みも同じだろうとして教会に寄付するという。

      落胆する家族だが、次にグラン・トリノを誰が相続するかの話では目を輝かせながら聞いている。
      しかし、弁護士が続きを読み上げると、「グラン・トリノはタオに譲る。ダサいペイントやリアスポイラーなどを

      付けるような改造はしないことが条件だ。」と書いてあった。

      ウォルトのペットである犬を助手席にグラン・トリノを運転するタオの姿が映し出され、映画は幕を下ろす。


      〜感想〜

      頑固で、分からず屋で、周りと打ち解けられない昔気質の老人の物語である。

      フォードの自動車工として働いていた彼は正に男らしい男の一人として描かれている。

      現代のジェンダー論などからすると、真っ先に否定されそうな古い時代の人間である。

      家の設備や家電などが壊れた際にサッと修理してしまうところは、いわゆるブルーカラーの格好良さが

      見事に表現されていると感じた。このあたりはクリント・イーストウッドの思想的な部分も関連しているのだろう。


      細かい部分で気になったのはウォルトがタオに軍手を渡してポケットに入れておけ、という場面である。

      筆者も昔、建築現場で働いていたことがあったが、軍手を作業着の後ろポケットに入れている姿は、いわゆる

      「現場仕事の人間」として非常に様になるものだ。


      このシーンを見て、ポケットに入れた軍手は世界共通なのかと感慨深い物があった
      筆者自身はさほど左寄りの思想の持ち主ではないのだが、額に汗する労働こそが美しいものであり、全世界の人々が

      そういった産業で生きていくのが理想だ、という考えを抱く人がいることも理解できなくはないと感じた。
       
      映画のストーリーについては、頑固老人の孤独と、その孤独を溶かしていく新たな出会いが描かれていて

      このあたりはとても心温まるような物語である。当初はモン族をイエローと呼んで差別意識を剥き出しにしていた

      ウォルトが徐々に打ち解けて心を開いていく様はとても心が穏やかになると感じた。

      そして、彼が最後に下した決断も彼なりの贖罪だったのだと思う。教会の懺悔では決して口にしなかったが

      タオに向けて朝鮮戦争の時に殺した人間のことを今でも夢に見ると告白したウォルトが、その人間達と同じ

      アジア人であるスーやタオのために自身の命を賭けて果たした報復は心が震える

      最近は老人の孤独死が増えていると言うが、自分の殻に閉じ籠もらずにこういった心の交流を持てる人達が

      増えていくことを切に願いたい。隣に住む人の顔も知らないような日本の都会では難しいかも知れないが、
      この映画のように、本当に些細なきっかけから人の交流というのは始まるものだと思う

      2018.06.07 Thursday

      『コンスタンティン』悪魔と戦う男、その運命とは

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        運命の槍を手に入れた者は世界の運命を握るという。

        物語の冒頭は運命の槍と思しき槍を手に入れた男が車に跳ねられたにも関わらず

        平然と走り出すところから始まる。


        場面は変わって、ある家で少女が悪魔に取り憑かれている様子が映し出される。

        手に負えないと感じたヘネシー神父から連絡を受けたジョン・コンスタンティン(キアヌ・リーブス)は

        エクソシストとして除霊に取りかかる


        少女の顔色が戻り、悪魔を遠ざけたかに見えたが、なんと悪魔が腹を蹴破って人間世界に出ようとしていた

        ジョンは巨大な鏡を用いて悪魔を鏡の中に閉じ込めると、アパートの上階から鏡を投げ捨てて粉々に破壊する

        ことで何とか悪魔を退けることに成功した。


        ジョンは悪魔が人間界に出ようとすることを奇妙に思い、元エクスシストのヘネシー神父に調査を依頼し

        自身も助手であるチャズ・クレイマーと共に車で悪魔と天使のハーフブリードと呼ばれる存在が集まる

        “中立”のBarへ情報収集に向かう


        チャズは同行を願い出るが、ジョンに断られ、無理矢理付いていこうとするも、入口のセキュリティに

        拒否されてしまう。ジョンはBarの奥にいるパパ・ミッドナイトと会話する。

        ジョンは悪魔の動向がおかしい、といって“椅子”を貸してくれるよう願い出るが、ミッドナイトは

        「悪魔も天使も人間界には出てこられない」と言い、中立を守るために協力を拒否する。


        そこで、悪魔のハーフブリードであるバルサザールと対面し、2人は一触即発の雰囲気となるが

        店内での争いは許さないと激高したミッドナイトにより、ジョンはBarから追い出されてしまう。


        ジョンは協力者のビーマンから対悪魔用の武器を購入し、準備を進めていた。しかしジョンは

        ヘビースモーカーのため肺がんを患っていて、医者からあと僅かの命を宣告されていた。

        ジョンは教会に行き、天使のハーフブリードであるガブリエルに寿命の延命を願い出るが却下される


        ジョンは悪魔を地獄に追い返す仕事を長く続けているにも関わらず報われないと批難するが

        ガブリエルは、お前は私利私欲のためにエクソシストをしているに過ぎず、神を知ってはいるが信じておらず

        自己犠牲の精神がなく、彼が過去に起こした自殺未遂という大罪による地獄行きは免れない、と言い放つ。


        その教会でジョンは、優秀な女刑事であるアンジェラ・ドッドソン(レイチェル・ワイズ)と出会う。

        彼女は犯人や、どこを撃てば良いのかが何故かわかってしまう特殊能力のようなものを持っていた

        アンジェラは妹であるイザベルが精神病院に入院中に飛び降り自殺をした件について、彼女が自殺など

        するわけがない、と認められずにいた。

        ヘネシー神父は調査を続けていると、イザベルが精神病院で自殺したことを報じた記事から

        不穏な気配を感じ、病院に安置されている彼女の遺体を探しに行く。

        そして、彼女の腕に紋章のようなものが刻まれていることに気づくが、途端に身体に異常をきたし、

        手元にあった酒を飲もうとするが、何故か酒は一滴も出てこない。


        錯乱したヘネシー神父はスキットルを落とし、病院を飛び出すが、落ちたスキットルからは酒が流れ出ていた。

        近隣の酒屋を訪れたヘネシー神父は片っ端から店に陳列してある酒を飲み干そうとするが、先ほどと同じように

        一滴も酒は出てこない。命の危機を感じたヘネシー神父はコルク抜きを手に取って、手のひらに何かを刻みつける


        一方で、アンジェラはイザベルが飛び降りる瞬間を捕らえた防犯カメラの映像を繰り返し見ていると

        ある瞬間に映像の中のイザベルが「コンスタンティン」と呟くのを聞いた。

        アンジェラはジョンの家を尋ね、事情を話して、真実を知りたいと願った。


        ジョンは真実を探ろうと猫と水を使って、地獄を覗きに行き、そこでイザベルを見つける。

        地獄から戻った彼の手にはイザベルが入院していた際に付けられていた腕章を手に持っていて、

        君たちは双子だな?彼女が地獄にいたということは、彼女は自殺だ」と結論付ける。

        ジョンはヘネシー神父が殺されたことを知り、現場に向かうとそこには急性アルコール中毒で死亡した

        ヘネシー神父がいた。バルサザールによって幻覚を見せられていたのだ。ジョンはヘネシー神父の

        手のひらを開き、彼がダイイングメッセージとして残した紋章を確認する


        ジョンとアンジェラはイザベルが生前にいた病室へ向かい、何か手がかりがないか探そうとする。

        ジョンは双子であるアンジェラならイザベルが最後に残したメッセージに気づけるはずだ、と言い

        幼少期の伝言ゲームを思い出したアンジェラはイザベルの残したメッセージを見つける

        それは地獄の聖書の章番号だと気づいたジョンはビーマンに該当する記述を調べるように依頼し、ビーマンは

        電話越しに記述を読み上げる。それによると、サタンの子であるマモンが霊力の強い人間を依り代にして、

        神の助けを得て人間界に現れることが記載されていた

        話を聞いている途中でビーマンは危険を察し、ジョンに「君を信じている」と言い残して電話が切れてしまった。

        急いでビーマンの元へ向かう2人だったが、辿り着いた時には既にビーマンは息絶えていた。

        アンジェラは霊力の強かったイザベルが一連の事件に巻き込まれたと感じた。そして、アンジェラ自身も幼少期は

        イザベルと同様に霊力が強かったことをジョンに打ち明けて、悪魔と戦う決意を固める

        ジョンはアンジェラを車に置いて、武器を持ってバルサザールのもとへ向かい、反撃を受けるが何とか
        バルサザールを退け、地獄ではなく天国に送ってやると脅しをかけて、マモン召還の真相を聞き出そうとする。
        すると、「俺たちの目的はあの女だ!連れてきてくれて助かったよ!」と言った。

        振り向くとそこにはジョンの言いつけを守らずに加勢しようとしたアンジェラがいた。
        アンジェラは悪魔の力により宙に浮き上がり、連れ去られてしまう。後を追うジョンだったが、見失ってしまう。
        ジョンは再度ミッドナイトの元を訪れ、かつての仲間であるビーモンやヘネシー神父が殺されたことを告げ

        “椅子”を利用させてくれるよう協力を取り付ける。

        “椅子”とは処刑に使用されていた電気椅子で、それまでに何百人もの命を奪ってきた代物だという。

        ジョンはこれに座り、電気ショックを受けることで臨死体験をし、地獄に向かってマモンの居場所を探る。
        危機一髪のところでミッドナイトから呼び戻され、アンジェラの居場所を突き止めることができた

        武器を準備し、チャズと作戦を立てていたところ、チャズが十字架を通すことで水から作り出せる聖水を利用しよう
        という提案を受け、有用な作戦であることにジョンとミッドナイトは驚きながら、その実力を認める

        ジョンとチャズはアンジェラが囚われた精神病院に向かい、救出を試みる。

        マモンが取り憑いたアンジェラを除霊しようとするが、激しい抵抗に遭う。その時、チャズもジョンと一緒に

        悪魔を攻撃する詠唱を行い、なんとかマモンの除霊に成功したかに見えた

        しかし、その時、チャズの身体が操られ、天井と床に激しく叩き付けられてしまう。

        振り返るとそこにはなんとガブリエルの姿が。ガブリエルはどんな殺人犯であっても反省し悔い改めれば

        神に赦され、愛を受けることができる点で人間は優遇されすぎている、と言って人間を逆恨みし、
        人間界を混沌に貶めるためにマモンを呼び出そうとしていたのだ。

        ジョンは何とか食い止めようと抗うが、ガブリエルの力は強大でまるで刃が立たない。
        ガブリエルが運命の槍をアンジェラの身体に突き立てようとしたその時、ジョンはなんと自ら命を絶とうとする
        すると、ルシファー(サタン)が現れ、「お前の命だけは俺が直接取り立てようと思っていたんだ」と言う。

        ジョンはルシファーに対し、「お前の息子が今、後ろの部屋にいるぞ。ガブリエルと運命の槍も一緒だ。」と

        伝える。ルシファーはその言葉を聞いてその部屋に向かい、アンジェラの身体を抱えて運命の槍から遠ざける。
        そして、アンジェラに取り憑いているマモンを地獄に送り返したのだ

        ガブリエルはルシファーに対して攻撃を仕掛けようとするが、神の怒りに触れ、全ての力を失ってしまう。
        そしてルシファーはジョンの元に戻ってきて「望みは何だ?寿命か?」と尋ねる。
        ジョンは「寿命はいらない。イザベラという娘を天国に送ってくれ。」と答える。

        ルシファーは望みを叶え、ジョンを地獄に連れて行こうとするが、何故かジョンの身体は非常に重くなっていて
        引き摺ることができない。そうしているとジョンの身体が浮き上がり、天国に向かおうとしていた。
        ジョンは最後に“自己犠牲”の精神に辿り着いたことで神の赦しを得たのだ

        ルシファーは激怒し、意地でもジョンを天国に行かせたくないことから、彼の肺に手を突っ込んで肺がんを摘出

        し、地獄行きへの希望を残しそうとした。意図せずして延命することができたジョンは人間世界に残ることになり
        ガブリエルに相対する。

        彼女は「自分を殺せ」と言って銃を差し出すが、ジョンは銃を撃たず、彼女の顔面を殴り飛ばして

        これが痛みだ、早く慣れろよ」と言葉を残して去っていった。

        エンドロールの後、ジョンはチャズの墓を訪れていたが、その時チャズの墓が光り、天使の姿となったチャズは
        空に向かって飛んでいくのだった。



        〜感想〜

        天使と悪魔が存在する世界で、見えざる者が見える特殊能力を持った男が悪魔狩りとして活躍する物語だ。
        全体的にキリスト教的な宗教観が色濃く描かれており、特に自殺が大罪として扱われている点が印象的である。

        イザベラなどは自殺であることからカトリックの教会では埋葬を断られる描写がある。

        生前は敬虔なカトリック信者であったというイザベラでさえも自殺をしたという一点で弔うことさえ

        赦されないという宗教観は、日本人の目からすると少し異様に感じる部分がある

        その他にもガブリエルの凶行の動機は神があらゆる人間を赦してしまうことであったりと、物語のキーとなる部分で
        宗教が密接に関わっていることが言える


        ただ、そこまで深い宗教論争や禅問答のようなやり取りは特になく、全体としては勧善懲悪の悪魔狩りストーリー

        といっても過言ではないだろう。本筋はシンプルながら、アクセントとして宗教を上手く扱っていると感じた。

        CGを活用した悪魔憑きやハーフブリードの描写は迫力があり、キアヌ・リーブス主演のアクション映画としても
        一定の評価を得られる作品ではないだろうか。

        難解なストーリーは苦手で、かといってあまりにもひねりがない物語も少し・・という人にはシンプルに楽しめる
        映画作品
        だと思われる。

        2018.05.30 Wednesday

        『オブリビオン』地球を守る男は真実に気づいた時、決断する

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          主人公はトムクルーズ演じるジャック・ハーパーという男である。彼は過去の記憶を消去され、荒廃した地球に

          設置された高度1000mの建造物でドローンの監視業務に従事している。ドローンは地球上の海水を汲み上げて原子力

          として利用するプラントをスカヴと呼ばれる地球外生命体から守るために巡回をしている。

           

          物語の舞台となる地球は、過去にスカヴの襲撃を受け、人類は対抗するために核兵器を使用し、その結果

          地球は放射能に汚染されて、大部分が居住不可能となってしまっている

          残された人類はテットと呼ばれる宇宙基地に避難し、土星の衛星であるタイタンへの移住を目指している。

           

          ジャックは記憶を失っているはずだが、時折過去の思い出のような映像を夢に見ることがある。

          繰り返し見る夢のなかではいつも同じ女性が現れ、ジャックと親密そうな様子だが、

          彼女のことを思い出すことはできない。

           

          彼は夢の女性とは異なるヴィクトリアという女性とチームを組んで仕事をしており、2人は公私ともに良きパートナー

          である。彼らのコードネームはTech49と呼ばれている。ある日、プラントを守るドローンのうち2機がスカヴの攻撃

          を受けて破壊されてしまう。

           

          ジャックは自身が乗り込むタイプのドローンを操縦して、地上に急行、まず信号を発信している1機のドローンを発見

          し、修復を行った。もう1機は信号がわからず、ドローンによる空中からの捜索は困難と判断し、ヴィクトリアは本部

          であるテットのオペレーターであるサリーと交信し、追加物資を要求する

           

          しかし、ジャックは自分のドローンからバイクを取り出し、もう1機のドローンの捜索に向かい、地下に墜落している

          ドローンを発見する。彼はロープを使い、慎重に地下に降りたってドローンの捜索を開始するが、暗闇からスカヴと

          思われる集団の襲撃を受け、拘束されそうになる

           

          間一髪のところでドローンが現れ、スカヴを攻撃してくれたため、ジャックは何とか逃れることができた。

          脱出する前にジャックは古代ローマの詩集が落ちているのを発見し、興味を惹かれたジャックはそれを持ち帰ること

          にする。しかし、ロープを上ってみると、乗って来たバイクが跡形もなく消え失せてしまっていた。

           

          次の日、プラントのうち一基が何者かにより破壊されてしまう。原因は不明だが、スカヴがドローンを襲撃して

          奪った燃料電池を爆弾として利用したのではないかとヴィクトリアは分析する。

          ジャックはスカヴの残党がいないか現場へと調査に向かうが、既にスカヴは去った後だった。

           

          その後、ジャックはヴィクトリアとの交信を切り、自分自身が秘密基地としていると思われる湖畔の家に向かった。

          彼はそこに先日手に入れた詩集を置き、ゆっくりとくつろぎ、リフレッシュしたようだ。

          その場所には、これまでにも彼が収集したと思われる物などが置かれいて、大切な場所だということを伺わせる

           

          その時、空からパラシュートを開いた物体が落ちてくるのを目撃したジャックは現場に急行しようとする。

          ヴィクトリアとも連絡を取り、彼女はテットのサリー曰く、ドローンを向かわせるため、ジャックは向かわなくて

          良いと指示していると伝えるが、既にジャックは現場に到着しようとしていた。

           

          近づいてみると、宇宙船の残骸であろうことがわかり、幾つものカプセルに生存者がいることを確認する

          カプセルの確認を進めていると、一つのカプセルにいつも夢に見ていた女性が入っていることを発見し、ジャックは

          激しく動揺する。

           

          その時、ドローンが宇宙船の墜落現場に到着し、生存者がいるカプセルを発見すると、なんと生存者に対して攻撃し

          彼らを殺してしまう。ジャックは夢に出てきた女性だけでも守ろうとカプセルの前に立ちはだかり、なんとか

          ドローンの攻撃を阻止し、彼女を救助して基地に戻る

           

          彼女が乗ってきた宇宙船はスカヴが地球を襲撃する60年前よりも以前に地球から発射されたものであり

          60年以上のコールドスリープ状態だったため、目覚めて体調が戻るまでにしばらくの時間がかかった。

          彼女は目覚めると、ジュリアと名乗り、宇宙船のフライトレコーダーをドローンよりも先に発見すべきと主張する。

           

          ヴィクトリアは反対するが、ジャックは真実を知りたいとジュリアと同行することを決める。

          2人は墜落現場でフライトレコーダーを回収するが、スカヴの襲撃に遭い、捕らえられてしまった

          連行された2人はマルコム・ビーチと名乗る初老の男と出会う。

           

          マルコムはジャック達に「スカヴは地球外生命体だと思い込んでいるが、近くで本当に見たことがあるのか?」と

          尋ね、スカヴだと思っていた者達が人類の生き残りであることを示唆される。“彼ら”は軍隊出身の人間が多いようだ。

          ドローンを襲撃していたのは燃料電池を奪うためで、彼らは10個の燃料電池をテットに撃ち込む計画を立てていた。

           

          彼らは爆弾として燃料電池を運ぶ手段がないため、ドローンのプログラムを書き換えようとしたが、ジャック以外の

          人間にはプログラムの書き換えができないように設定されていることを知る。そのため、ジャックを捕らえて

          プログラムの書き換えをさせようとしていたのだ。

           

          ジャックは「テットに住む人間達はどうなるんだ」と激高するが、マルコムは「テットに人類などいない」と

          言い放つ。それでも承服しかねるジャックを見かねて、彼らのうちの1人がジュリアを人質に強要しようとする。

          その時、ドローンが基地を発見し、攻撃を仕掛けてくる。

           

          犠牲を払いながら、なんとかドローンを撃退した後、ジャック達は解放される。

          その時にマルコムは「放射線による汚染地区に行けば、真実がわかる」と言い、ジャックから奪ったバイクを

          返してくれる。

           

          通信塔に向かい、ヴィクトリアに無事を伝えると、いつも夢に出てくる場所と似ている場所が近くにあることに

          気づく。ジャックはその場でジュリアに「君は何者だ。俺に何を隠している。」と尋ねる。

          ジュリアは「私たちは同じ宇宙船に乗っていて、私は貴方の妻よ」と答えた。

           

          衝撃を受けるジャックだったが、思い出の場所にある双眼鏡を見て、記憶を取り戻すことができた

          ジュリアとのデートやプロポーズの思い出の記憶が蘇り、2人は感動に包まれ、抱きしめ合う。

          その時、ジャックが乗っているドローンが二人の前に降り立ち、ヴィクトリアはドローンのカメラを通して

          その様子を目撃してしまう。

           

          その後、更に詳しい話を聞くと、自分達の任務は突如宇宙空間に現れた「テット」の調査を行うことだった

          という。そして、コールドスリープ状態で宇宙船に乗っていた船員達のうち、ジャックとヴィクトリアだけが

          先に目覚めさせられたのだという。

           

          真実を知ったジャックはTech49の拠点に戻り、ヴィクトリアを説得しようとするが、彼女はジャックとジュリアが結ばれていたことへのショックもあるのか、受け容れようとせず、テットに対してジャックは任務に不適当だと報告を入れる

           

          すると、拠点の内部に隠れされていたドローンが起動し、攻撃を仕掛けてきた。間一髪でジャックはジュリアに助けられるが、ヴィクトリアは殺されてしまう。憤慨したジャックはテットへの通信を行い、猛烈に抗議する。

          すると、サリーは「ドローンは誤作動することもある」などと言い、「生き残ったその女性と2人で帰って来なさい」と告げた。

           

          操縦式ドローンに乗り込み、その場を脱出したジャックとジュリアはテットに操られているドローンからの追撃を避けながら、地球を彷徨う。しかし、とうとう汚染地区の砂漠に墜落してしまう。ジュリアを待機させ、周辺を捜索していると、なんとそこでジャックは自分と全く同じ容姿のTech52のジャックを発見する

           

          2人のジャックは交戦となってしまい、Tech49のジャックはなんとか相手を拘束することに成功するが、交戦時の

          流れ弾でジュリアが負傷してしまう。ジャックはジュリアを安静にし、Tech52のドローンに乗り込み、拠点に向かうとそこにはヴィクトリアがいた。彼女もクローンだったのだ。

           

          彼女を説得して地上に連れだそうとするが、規定違反だと言って取り合ってくれなかった。ジャックは説得を諦め、救護用の道具を手に、ジュリアの元へ急行する。治療が間に合い、ジュリアの危機は去った

          2人は湖畔の家に向かい、穏やかな時間を過ごす。

           

          ジャックは湖畔の家で自分自身がクローンだったとジュリアに真実を話す。

          「だが、ずっと君を愛している、、信じてくれ」とジャックが言うと、ジュリアは「貴方は昔、全てが終わったら湖畔に家を建てて、2人で一緒に年を取って、太って、喧嘩して、いずれ息を引き取り、湖畔に埋められる。そして、いつか忘れられる。でも2人の愛は永遠だと言ったわ。これは、この場所は、貴方だけの思い出よ。忘れないで」と言った。

           

          翌日、ジャックはマルコム達を助けることを決意し、人類の基地に向かう。マルコムは、真実を知ったジャックに対して、今なら理解できるだろうと思い、過去の地球に起こった出来事を話し始める

           

          彼は、自分が陸軍に入隊した年、数千人のジャックが地球に舞い降り、侵略を行ったことを告げる。

          その後、プラントが建てられ、ドローンがやってきて、今度はジャックがドローンの修理屋として現れた。

          彼らはジャックの姿を注意深く観察していたという。

           

          すると、ジャックはローマの詩集に興味を示した。これまでのジャック達は機械のように命令をこなすだけだったが、その姿を見た時、微かな希望が見えたようだった

          更に、ジャックは命を賭してジュリアの命を救った。その時、マルコムの希望は確信に変わったという。

           

          ジャックのなかに、本当のジャックが生きている、それを表に引っ張り出そうと決意し、作戦行動を行ったのだという。人類達が果たしてテットとは何なのか、と疑問を呈すると、ジャックはテットのことを機械だと言った。

          全てを知ったジャックはドローンの再プログラミングを成功させるが、正にその時、複数のテットのドローンに基地を発見され、襲撃を受ける

           

          多くの犠牲を払って何とかドローンを撃退した人類だったが、テット攻撃用ドローンは破壊されてしまった

          ジャックは自身がドローンに乗り込んでテットに爆弾を運ぶと言い、それを聞いたジュリアは自分も一緒に行く、と告げた。

           

          ジャックはジュリアをコールドスリープ状態にし、カプセルを搭載したドローンは、テットに向かう

          テットに向かう途中、フライトレコーダーの音声を再生すると、ジュリアの言うとおり、ジャックとヴィクトリアだけが先に目覚め、NASAとの交信をしながらテットに向かっていた。

           

          その時のNASAのオペレーターがなんとサリーだったのだ。この時既に、テットからのハッキングを受けていたのか、NASAからの指令通りに宇宙船をコントロールするも、テットとの距離を保つことができず、どんどんテットに近づいていってしまう。

           

          危険を感じたジャックは、残る隊員達が眠る睡眠室を切り離し、地球に送り返すことにした。そしてジャックとヴィクトリアの2人がテットに接触する直前で記録は途切れていた。

           

          テットに辿り着いたジャックは「どんな目的で帰って来たのか」と尋ねられ、「貴方が生存者と2人で帰ってこいと言ったからだ」と答えるが、嘘を見破られてしまう。再度目的を尋ねられ、今度は「ジュリアの命を救い、人類を存続させたいからだ」と答え、進入を許可される。

           

          そして、テットの内部に降り立ったジャックはコールドスリープ状態のカプセルを開ける。すると、そこに入っていたのはなんとマルコムだった。約束が違う、とテットに詰問されるが、2人は爆弾の起爆スイッチを押し、テットの破壊に成功する

           

          地上の湖畔の家に残されていたジュリアはカプセルから出て空を見上げると、テットが爆発する瞬間を目撃し、涙を流す。それから数年後と思われる湖畔の家の風景が映し出され、娘と思しき少女と共に暮らすジュリア。

          少女が何かを見つけ、ジュリアに大声で呼びかけると、その先には少年の姿が。

           

          少年の後ろからかつて出会った人類の生き残り達が現れる。さらに、そのなかにジャック・ハーパーの姿を見つけ出す。彼のユニフォームに刻まれたコードは『52』だった。そして彼は語り出す。

           

          「3年間かけて探した彼の家は、やはりここだった。僕は知っていた。」

          「Because I am him. I am Jack Harper. I’m home.」


          〜感想〜

          物語は、記憶を消され、地球の侵略者側の人間として任務についていた主人公が記憶を取り戻し、真実を知った後

          人類達と共に地球を救うために自分を操っていた侵略者を破壊する、というものだが、明らかにされていない謎も

          いくつか残っている

           

          例えば、テットの目的は何だったのか、テットは単なる機械生命体だったのか、それとも侵略者が姿を見せずに他の惑星を手に入れるための巨大な兵器だったのか、そのあたりは描かれていない。また、テットがただの機械だということをジャックがどのようにして悟ったのかもはっきりとはわからない

           

          だが、結論としては人類は戦争に勝利し、少しずつ文明を復活させて行くであろうことが示唆されるラストシーンだったことを考えると、真実が何なのかは些末な問題なのかも知れない。

           

          気になった点としては、ラストシーンでTech52のジャック・ハーパーが現れて、さもハッピーエンドのように描かれているところである。どうしても鑑賞者としてはTech49のジャックに感情移入をしながら物語を読み解いていたことから、彼が死んで代わりのクローンが現れたからといって、それで全てが丸く収まるようには感じにくかった。

           

          しかし、改めて考えてみると、そもそもTech49のジャック自身もクローンであり、あくまでも断片的な記憶が夢として残っていて、ジュリアとの出会いによりその記憶を取り戻したに過ぎない。だが、彼は記憶を取り戻す前から過去にジュリアに語った湖畔の家を見つけ、その場所をとても大切にしていた

           

          そして、そのことをジュリア自身も認めていて、“貴方だけの思い出”として決して忘れないように話していた。

          そうすると、Tech52のジャックがその湖畔の家を発見したことは、“本来のジャック・ハーパー”が導くままに辿り着いた、ということを示唆している。

           

          彼のなかにもまた、ジャック・ハーパーが息づいていたのだ。

          ジュリアは49のジャックに対して、クローンであっても、貴方だけの思い出があれば良い、と言っていた。

          湖畔の家という記憶を共有した52のジャックもまた、同様の存在であり、さらに2人はこれから先の未来において

          あらゆる思い出を作っていくであろう無限の可能性を秘めていると言えよう。

           

          そのような思考に思い当たると、ラストシーンに抱いた違和感も薄れ、物語との矛盾も感じられないようになった。

          Tech49と52以外の存在については少し気になるところではあるが、マルコムの話によれば、ほとんどのジャックは機械のような存在で、感情などを持ち合わせていなかったという

          それならば、湖畔の家の記憶を持つ52のジャックもまた、唯一無二の特別な存在と言えるだろう。

          2018.05.29 Tuesday

          『ミッドナイト・イン・パリ』黄金時代に迷い込んだ男の束の間の夢想

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            ハリウッドの脚本家であるギルは、婚約者のイネズとその両親の海外出張に同伴して

            憧れの街であるパリを訪れていた。彼は特に1920年代のパリに憧れを抱いていて

            黄金時代と評して、その時代に活躍した芸術家達を尊敬していた。

             

            ギルは脚本家としては安定して仕事があり、人気を得ているが、小説家を目指して

            執筆活動中で、パリの街は非常にインスピレーションが得られるとして、できれば

            住んでみたいと思っている。

             

            パリでギルとイネズが食事をしていると、イネズの友人のカップルであるポールとキャロルと

            偶然遭遇し、4人で観光することになる。イネズは学生時代からポールに憧れていたようで、ギルは

            あまり良い気持ちがしないが、社交的でないといってイネズから批判されてしまう。

             

            ポールは知識をひけらかすインテリぶった態度の男で、ロダンの作品についてガイドに案内されている時に

            誤った解説をしてしまい、ガイドに訂正されるが、ガイドの方が間違っていると言って認めようとしない。

            しかし、イネズは彼をインテリと信じているようで、そういった知的な部分に好意を抱いているようだ。

             

            夕食後、ポールはダンスに出かけると言ったが、気の進まないギルはそれを断る。

            すると、イネズはギルを置いてポール達とダンスに出かけてしまい、取り残されたギルは

            酔いを覚まそうと深夜のパリの街を散歩しながら部屋に戻ることにした。

             

            ギルが道に迷って途方に暮れていると、クラッシックカーに乗った集団に声をかけられ

            車に乗るように誘いを受ける。人違いではないかと戸惑いながらも誘われるがままに

            車に乗ると、辿り着いたのは彼が追い求めた1920年代のパリだった。

             

            そこでヘミングウェイやスコット・フィッツジェラルドなどと巡り会い、歓喜の夜を過ごすことができた。

            さらにはヘミングウェイの紹介でガートルード・スタインに彼が書いた小説を批評してもらう約束を

            取り付けることができた。

             

            翌日、イネズに感動の冒険について伝えようとするが、真に受けてもらえない。

            なんとか説得して深夜に昨日と同じ場所で車を待とうとするが、待ちくたびれたイネズは

            ギルを置いてタクシーを拾い、部屋に戻ってしまう

             

            イネズが去った後、深夜0時の鐘が鳴り、またもやギルは昨日のクラシックカーを見つけ

            急いで乗り込むと、車内にはヘミングウェイがいた。挨拶もそこそこに二人は死の恐怖と

            愛について議論を交わす。

             

            ガートルードに小説を批評してもらうため、芸術家達が集まるサロンに向かう2人。

            そこではガートルードがパブロ・ピカソの新作について批評を行っていた

            彼女はパブロが愛人アドリアナをモデルに書いた作品について、彼女の繊細な美しさが表現されておらず

            性的な情愛のみが全面に押し出されている、と批判した。

             

            ギルは彼女に小説を手渡し、読んで貰うように依頼する。

            そして、冒頭部分を彼女が読み上げると、パブロの愛人であるアドリアナが

            「私、その小説好きよ」と気に入った素振りを見せてくれた

             

            気をよくしたギルはアドリアナに話しかけ、彼女が現在はパブロの愛人だが

            これまでも何人もの芸術家と恋愛関係にあったことを聞く。

            その芸術家達の著名さに感動したギルは彼女に対して尊敬と憧れの念を抱く

             

            その後もギルは毎晩タイムスリップを続け、アドリアナと親しくなるが、ふとしたキッカケで

            彼に婚約者がいることを話した時、アドリアナはショックを受けた様子で帰ってしまった

            その様子を見ていたダリに話しかけられたギルは慰めを受けながら、シュールレアリスム的な

            発想を小説に組み込むことを思いつく。

             

            一方で現代では旧時代の商品を扱う店を巡って、1920年代を訪れた際に演奏を聴いた音楽のレコードを

            買って、店員の女の子と旧時代の良さを語り合ったり、アドリアナが書いた本を読んで、

            彼女がギルに好意を抱いていたことを知る。

             

            ギルはその本に、ピアスをプレゼントされた夜に彼女とギルが結ばれた、という描写があるのを見つけ

            大急ぎでピアスを買いに行って、プレゼントとして包装してもらった。

            アドリアナとギルはとても良い雰囲気になり、夜のパリで2人はキスを交わす

             

            すると、そこに馬車が現れて、2人を馬車へと誘う。

            馬車に乗って辿り着いたのは、アドリアナにとっての黄金時代である、ベル・エポック時代だった

            彼女は感激し、そこで巡り会ったロートレックやゴーギャンらと話すなかで現代は退屈でつまらない、と零す。

             

             

            しかし、そこで出会ったロートレックやゴーギャンもまた、彼らにとっての黄金時代はさらに過去にあると

            話していた。2人が外に出ると、アドリアナはギルに、「私はこの時代に残るわ」と告げる。

            驚いたギルは自身が2010年から来ていることを明かし、いつの時代も過去が良かったと

            思い帰ることがあるんだ、と説得しようとする。

             

            だが、アドリアナは「あなたは小説家だから論理的に考えるのかも知れない、でも私にとって重要なのは

            理屈じゃなくて情熱なのよ」と言って、2人は別れの言葉を口にする。

             

            1920年代に戻ったギルは書き直した小説をガートルードに見て貰うと、非常に良い評価を受けるが

            1点だけ、「主人公が婚約者とインテリぶった男の浮気に気づかないのはおかしい」と指摘される。

            ギルは頭ではわかっていながら、それを心が拒絶しているのだ、と気づき現代に戻る。

             

            現代でギルはイネズに対して、君は浮気をしているだろうと指摘する。

            イネズは最初は否定していたものの、追求を受けるとあっさりとポールと複数回寝たと白状した。

            ギルは、パリに住むことにした、と言い、イネズに対して別れを切り出す

             

            婚約者を失ったギルは、1人パリの街を歩いていた。

            すると、レコードを買った店の女の子が声をかけてきて、ギルはパリに住むことを伝える

            珈琲でも一緒にどうか、とギルが誘うと、彼女は快くOKしてくれた。

             

            2人が店に向かおうとすると雨が降り出した。

            彼女は傘も差さず「パリは雨のほうが好きなの」と言い、ギルは自分と同じ好みなことに驚きながら

            「僕もずっとそう思っていたんだ」と話す。

             

            2人は雨に降られながらパリの街へ消えていった。

             


            〜感想〜

             

            過去にタイムスリップするという設定だが、過去で出会う芸術家達のキャラクターはもちろん

            過去の建築物や服装の装飾に至るまで、非常に高いクオリティで再現されており

            その芸術性の高さが本作の評価されている点であろう。

             

            ストーリーは特にひねりもないシンプルなラブコメディであり、特筆すべき点はない。

             

            パリという街そのものが芸術的である点と、その点から過去にあらゆる国から芸術家達がパリに集まった

            という事実が、本作の主人公のような憧れを抱かせる点であろう。

            また、その芸術性の高さゆえに本作のような幻想的な体験とも相性が良いように思える。

             

            ただし、芸術家達はあくまでも登場人物のため、彼らが描いた作品等は一部を除いてほとんど語られない。

            芸術家が創り上げた作品のみならず、彼ら自身の人格や特徴にまで興味を持っている人であれば

            細かい振る舞いにまで気を遣っていることが頷けるのであろうが、一般的に鑑賞する場合には少し難しい。

             

            黄金時代と謳われた1920年代や更に遡ったベル・エポック時代のパリを、ここまで精細に映像化した

            という点で非常に美しい映画とは言えるだろう

            2018.05.28 Monday

            『東京難民』一度堕ちたら這い上がれない、現代日本の闇を寓話的に描く

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              本作は同名小説の映画化であり、何の変哲もない大学生だった主人公の修が

              あることをきっかけに転落していく様を描いている。

               

              修は合コンをしたりバイトをしたり、大学で友人達と授業を受けたりするなど

              一般的な大学生として若者らしい人生を謳歌していた

               

              修はある日、内容証明の郵便物を受け取るが、中身を見ないまま部屋に放り投げてしまう。

              数日後、大学に行くと、修の学生証だけがIC認証に反応せず、エラーとなってしまう。

              学生課を訪れると、学費の未納によって除籍となっていることが告げられる。

               

              大学の職員に詰め寄り、学費を納めれば復学できるのか問いかけるが

              職員はこの場では答えられない、と冷たい返事を返す。

              感情的になった修は「こんな三流大学辞めてやる」と言い放ち、その場を後にする。

               

              一人暮らしの家に帰ると、マンションの管理会社の人間がやってきて

              今月分の“料金”が未納となっているため、ただちに家を出るように告げられる

              修は、いくらなんでも今日中には出て行けない、借主にも権利があるはずだと主張する。

               

              しかし、管理会社はこの物件に関しては敷金・礼金は無く、賃貸借契約は結んでおらず

              あくまで部屋の鍵の使用権を“使用料”と引き替えに得ているだけだと主張する。

              したがって、使用料が払われない場合はただちに退去する必要があると迫る。

               

              なんとか二日間の猶予を貰い、家賃や学費を払うことになっているはずの父親の元へ向かう。

              実家についてみると、物件は売りに出されていて、父親の行方もわからなくなっていた

              修の母親は既に病死しており、頼る人がいない修は自棄になってパチンコを打つが当たりを引くことはなかった。

              煙草を吸おうとするが、既に空っぽで踏んだり蹴ったりな思いで店を後にする。

               

              そして一人暮らしの家に帰ってくると、鍵が交換されていて閉め出しを食らってしまう

              管理会社に電話をして抗議するが、二日間の猶予は与えたはずだと言われ、荷物は未払い料金の担保として

              倉庫に預かっていると告げられる。修は荷物なんかくれてやると言い放ち電話を切る。

               

              家を失った修はネットカフェ難民となり、煙草を吸いながら日払いのバイトを探す。

              時給1500円のティッシュ配りのバイトを見つけ、面接に向かう。

              面接では一日のノルマは1500個だが、4時間程度で終わるため時給換算すると1500円だと告げられる。

               

              初日は6時間かかってなんとか全てのティッシュを配り終え、事務所に戻ると給料を渡されるが

              封筒には5400円しか入っていなかった。責任者に申し出ると、10%は税金だと告げられる

              「これじゃあ時給900円じゃないか」と納得のいかない修だが、とにかく日銭を稼ぐためバイトを続ける。

               

              先輩にコツを教えてもらいながら、徐々にティッシュ配りにも慣れてきた修だったが

              日給2万円の治験のバイトが見つかったため、バイトを辞めて治験に向かう。

              治験のバイト中は食事とベッド付きで平穏な生活が戻ったかのように見えた。

               

              しかし、ある日病院のテレビでネットカフェ難民の特集をしており、修はテレビに出ている

              ネットカフェ難民と自分を重ね合わせ、不安が膨れあがったあげく、テレビを衝動的に消してしまう

               

              治験が終わるとまとまったお金を手に入れることができたため、たまの贅沢をしようと

              ランチを吟味していると、警察官に職務質問を受けることになってしまう。警察官に鞄の中身を

              見せるように言われ、その中に、以前クレーンゲームで取った十徳ナイフが入っているのを咎められ、

              署に連行されてしまう

               

              修は「ナイフが付いていたことは知らなかった、じゃあキャンプに行く時にサバイバルナイフを持っていたら

              犯罪になるのか」と抗議するが、警察官は「知らないでは済まされない。正当な目的無く刃物を持ち歩くことは

              犯罪だぞ」と修を怒鳴りつける。

              見かねたもう一人の警察官が、しっかりと謝れば不起訴になるから今後は気をつけるようにと諭す。

               

              修は街でふて腐れていると、瑠衣という派手な女の子に声をかけられ、飲みに誘われる。

              Barに行き、二件目に行こうと連れて行かれたのはホストクラブだった。

              興味がないし、お金がないからと断ろうとする修だったが、瑠衣に私が誘ったんだから心配しないでと言われ

              そのままホストクラブで飲むことになる。

               

              順矢というホストを指名した瑠衣はどんどんお酒をオーダーし、修も一気飲みなどをしているうちに

              酔い潰れてしまい、目を覚ますと瑠衣は既に帰った後で、代金を請求されてしまう

              ホストに瑠衣が払うと言っていたと抗議するが、「瑠衣はいつも金ヅルを探しているだけだ」と言われ

              なけなしのお金を全て取られてしまう。

               

              これでは生活ができない、となんとかホストでも皿洗いでも何でもやるから雇って欲しいと順矢に懇願する。

              馬鹿なことを言うなと断られるが、話を聞いていたホストクラブの責任者である篤志が「面白いじゃないか」

              と言い、美容院代や生活費として5万円を前借りで渡してくれる。

               

              修は狭い寮で共同生活を営んでいるホスト達と暮らすことになるが、寮費は4万円にも関わらず

              後から入った修が寝る場所はなく、床に寝る生活を余儀なくされる

              修は小次郎という先輩ホストのもとで主に飲み役としてホストの仕事を覚えていく。

               

              ある時、瑠衣が茜という女の子を連れてホストクラブにやってくる。

              茜はナースをしていて、修のことが気に入ったようで、瑠衣は「茜を紹介したからこの前の分はチャラだから」

              と悪びれもなく言うが、修にとっても貴重な指名客であることは確かだった。

               

              茜はそれからも度々店に通ってくれるようになるが、修は無理をさせないように

              高額のオーダーは控えるように茜を諭す。

              そんなホストらしからぬ修の姿に茜はますます惹かれていく

               

              そんな折、瑠衣が飛んでしまい、売掛金250万円が未収だった順矢は窮地に立たされる。

              順矢は修に対し、茜からなんとか金を一部だけでも引っ張ってくれないかと頼む。

              一度は断る修だったが、茜と店外デートをしている時に「何か悩みがあるの?」と聞かれ、

              その内容を話すと、「朝まで一緒にいてくれるなら銀行で下ろしてきてあげる」と言われる。

               

              お金を手に入れた修は必ず返してくださいよ、と言いながら順矢に100万円を渡し

              順矢は他に自分でかき集めた金と一緒に250万円分を鞄に入れて、修と祝杯を上げる。

              酔いながら、順矢は修に「お前だけに話してやる」と、将来の夢はラーメン屋を開くことだと打ち明ける

               

              酔い潰れた二人が目を覚ますと、250万円が入った鞄が無くなっていた

              必死で部屋の中を探す二人だったが、小次郎の鞄も一緒に無くなっていることに気づく。

              小次郎が持ち逃げしてしまった金は戻らないと絶望した順矢は篤志に売掛金を払えないと事情を話す。

              篤志は「金の管理はお前の責任だ」と言い、順矢に今後は小次郎がやっていた飲み役をやれと言いつける。

               

              順矢が飲み役をやりながら、なんとか仕事を続けていると、飛んだ瑠衣が見つかったと連絡が入る。

              瑠衣をソープランドに沈めることで前金として200万円が手に入る、と篤志から言われ、店に連れて行くよう

              指示を受ける。修は店に着くまでの二人の監視役として指名され、「この世界に情は禁物だ」と告げられる。

               

              どうしても納得できない修は二人を逃がして自分だけ店に戻ると言い出すが、順矢は「そんなことをしたら

              俺たちの分もお前が背負うことになるぞ」と忠告し、三人で飛ぶことを決意する

              瑠衣には秋田の実家に帰るよう諭して交通費を渡し、順矢は頼りになる先輩がいる、と言いそのツテで

              修と二人で逃げ出す。

               

              先輩が紹介してくれた仕事はいわゆるタコ部屋で土工としての現場仕事だった。

              成功してデカい店を構えていると聞いていた順矢は違和感を憶えるが、現場に出ているという

              先輩が帰ってくるのを待つ。待遇は三食個室付きだが、食費と寮費は日給から天引きされる。

               

              現場仕事を終えた他の工員達が寮に戻ってくると、先輩の姿はなかった。

              一人が「彼は君たち二人を紹介した紹介料を受け取ってフケたのさ」と真実を告げる。

              怒りがこみ上げる二人だが、他に行く宛もなく、しぶしぶ此処で過ごすこととなる。

               

              何日も働いても手元に残る金は僅かで、やっと10数万円となった蓄えを持って

              修は茜が働いていた病院へと向かう。

              茜は貸した100万円がキャッシングで作ったお金であったことを告げ

              ホストクラブへのツケも支払いを迫られていることから早くお金を返して欲しいと詰め寄る。

               

              修はなけなしのお金を全て渡すが、「こんなものじゃ全然足りない、もうホストじゃなくなった

              貴方なんかに興味はない」と冷たく言い放たれる。さらに、順矢と修の居場所を聞き出そうとする。

              修は謝罪し、千葉県の建設会社で働いていることだけを告げ、必ずお金を作って返すと言って茜と別れる。

               

              現場仕事を続けていた二人だが、順矢はある日修に「瑠衣から連絡が来た、二人で秋田で暮らそうかと思ってる」

              と打ち明け、自分一人だけ抜け駆けする形になってしまったことを詫びる。

              翌日、みんなが現場に向かうなか、順矢が荷物をまとめているとそこにホストクラブの経営者である篤志が現れる

               

              篤志は順矢に修の居場所を訪ねるが、順矢は「修はとっくの昔に逃げた」と言い放つ。

              あと一歩のところで居場所を突き止められた順矢は、絶望のなか、店に連れ戻される。

               

              事態を知った修はなんとホストクラブに現れ、順矢を許してくれるように懇願する。

              篤志は、「お前達が飛んだ後、小次郎を見つけた。こいつは酒で肝臓も脳もやられちまってる。そのうち死ぬから

              生命保険をかけているが、なかなか死なない、こいつを喧嘩の弾みという名目で殺せば許してやる」と

              順矢に告げ、アイスピックを手渡す。順矢は絶叫しながらアイスピックを突き刺そうとするが、どうしてもできない。

               

              順矢は「中国に行って薬の運び屋をやるからそれで許して欲しい」と言い、篤志は「それでお前と修はチャラだ」と

              告げる。修は罪悪感から「自分も金を作ります」と言うが、それを聞いた篤志は激高し修を外へ連れ出して

              殴る蹴るの暴行を加える。

               

              「お前は金の重みをわかっていない、甘っちょろいことを言うんじゃねぇ」

              「中国でシャブを運んでるのがバレたら確実に死刑だ」

              あいつがどんな覚悟で言ったのか、それを理解せずに・・身の程知らずもいい加減にしろ

               

              ボコボコにされた修は多摩川の河川敷に捨てられる。

              その周辺に住むホームレスに拾われた修は記憶を無くしていた

              ホームレス達に助けられながら、アルミ缶の収集や拾った雑誌の販売などを手伝うようになる。

               

              そんななか、雑誌に載っている風俗店の広告に茜が載っているのを発見し、こっそりとそのページを破って

              大切にポケットにしまった。そのことがきっかけで記憶が戻ったのか、修は拾ってくれたホームレスに

              過去の話を聞いて欲しい、と言いこれまでの経験を語る。

               

              話を聞いたホームレスはしまっていた修の財布を取り出して、修に手渡した。

              「盗もうとした訳じゃない。記憶を失っているなら思い出さない方が良いかと思ってしまっていた。」

              でも、思い出したのなら、これは本人が持っているべきだ」と言った。

               

              修は財布を手に茜がいるソープランドに出かける。茜は修に「お金はあるの?」と訪ね、修がお金を出すと

              「じゃあ、お客さんだ」とサービスを始めようとするが、修はそれを制し、「俺はもう終わった人間だ」と

              言って、茜に謝罪し、「でも、茜や順矢や篤志さん、皆のおかげで俺は生きていられる」と続け

              少しずつでも必ずお金を全額返すと伝える。

               

              茜は涙を流しながら、「もうお金は良いの、私たちはまだ終わってなんか無いわ」と言い

              修を抱きしめる。「その代わり、私のためだけにシャンパンコールをしてくれる?」と言って

              修はそれに答えてシャンパンコールをするが、茜はそれを聞きながら涙を流し続けた。

               

              修は拾ってくれたホームレスにお礼を言い、自分の父親を捜してみようと思う、と告げた。

              「どこかできっと自分のようにしぶとく生きているはずだから」

               


              〜感想〜

              現代の日本では一度レールを外れたら終わりだと言う意見は良く聞かれる。

              個人的には全くそうは思わないが、本作の主人公のように「自分がレールを外れることを“想像すらしていない”

              人間だとしたら、この物語のようなことは現実に起こりえるといっても過言ではないだろう。

               

              学費滞納による除籍についてはあり得る話ではあるが、除籍前であれば奨学金等の方法が“世の中には

              いくらでも存在している。だが、何不自由なく育てられて親の庇護のもとにある人間がそういった制度を

              詳しく理解していることはないだろう

               

              ゼロゼロ物件については過去にニュース等で取り上げられたが、一日でも利用料(という名目の家賃)を滞納

              した場合には即座に鍵を変えられて入室できないようにしたうえ、鍵の交換料を請求される、といったような

              悪質な業者は現実に存在し、普通に営業していたのである

               

              ちなみに上記の不動産トラブルについては被害者の会が結成され、民事上の裁判を起こされていたが、

              被告である会社側は一時刑事告訴までされていたようだ。(のちに和解し、刑事告訴も取り下げられた)

               

              もし主人公が法学部であれば、こういった裁判例を知らずとも、実質的には賃貸借契約とみなされる行為を

              鍵の利用権とするのはあまりにも無理があることには気づけただろうが、あくまでもたらればに過ぎない。

               

              また、ティッシュ配りのバイトだが、そもそも時給1500円と言いながらノルマ有りの出来高制

              である時点で、明らかに労働条件に偽りあり、である。さらに10%の税金と言っているが

              日給で源泉徴収税が発生するのは9300円以上の場合のみであり、該当しない。

               

              しかし、筆者も経験があるが、アルバイトが中心となるような飲食・小売業界などでは

              そもそも社員の待遇ですら労働基準法が遵守されていないことが多く、こういった部分で

              無知な人間が搾取されることは、今もどこかで平然と行われていると考えるべきだろう。

               

              その“無知である”ということは劇中では警察官が「知らないでは済まされない」と言っているように

              知らないことは免罪符ではなく、それだけで“罪”と成り得ることを知っておかないと足下をすくわれるだろう。

               

              だが一方で、このようなことを知識として知っている大学生が日本にどれだけいるだろうか。

              もし、このような知識のない若者が何かのキッカケで“レールを外れてしまった”ら、この主人公のように

              ならないと誰が断言できるだろう。

               

              ただし、映画そのものの感想としてはリアリティを追求した、というよりはどちらかというと現代の寓話的に

              描かれているように思う。もちろんストーリー上の個別の部分については細かい部分まで調べられていて

              現実に則した内容となっているが、実際には、そういった様々な現代社会が抱える問題が、たった一人の

              人間にのみ降りかかることは考えにくいだろう。

               

              また、主人公の性格は世間知らずで深く考えないところがあり、当初は全ての問題を父親のせいだと

              言って自身を省みないのだが、一方で情に厚く、優しい部分が見受けられ、甘さが抜けず非情になれない

              という、これもまた非常に寓話的なキャラクターである。

               

              もし、リアリティを追求するのならば、これだけ悲惨な経験をした場合には、人格にも変化が訪れるのが

              自然であるし、映画の物語もそういった闇に堕ちた側面を描き出す構成にすべきだろう。

              しかしながら、本作の主人公は常に甘ちゃんで、お人好しのままである

               

              それゆえ、映画全体としては厳しすぎない空気感がどこかにあり、シリアスな場面でも陰鬱になりすぎないような

              配慮が感じられる。ラストシーンについては爽やかさすら感じるほどである。

               

              ちなみに、主人公が吸っている煙草が経済状況に応じてアメスピになったり、エコーになったりと芸が細かい。

              これは警察官に「良い煙草吸ってるな!」と嫌味を言われるなど、一応説明があるが、個人的には不要だったと

              思う。(説明が無くとも気づく人は気づくし、気づかない人はエコーが安煙草だと気づかないだろう)

               

              カレンダーがないタコ部屋の寮に案内された時に壁に正の字が書き連ねられていたのも印象的である。

              恐らく以前の入居者は借金のカタに売られてきたか、事情があって金を作るまで仕事を続ける必要に迫られていた

              のだろう。しかし、タコ部屋で行われるような肉体労働は非常に厳しいものが多く、肉体も精神もギリギリの

              状態で、一日一日を正の字を書き付けながら乗り越えていたのであろう。

               

              ここは特に解説もなく、映画上は肉体労働についてもあまりシビアな描写はなく、むしろ、順矢が

              「生きている実感がある」と発言するなど、好意的な発言も見られるが、実際には他の工員が

              俺たちは底辺だ」と言うように、生易しい世界とは到底言えないだろう

               

              作中でも若干仄めかす程度に解説があるが、肉体労働のなかでも日雇い労働者は最も厳しい環境で働いている

              言わざるを得ず、そのなかでも職工と呼ばれるような技術を持って現場仕事をしている労働者よりも更に苦しい

              のが修たちがやっていたような土工と呼ばれる“誰にでもできる”仕事である。

               

              社会問題に鋭く切り込みながらも、あえてドキュメンタリーチックにはせず、寓話的な描き方をした点については

              評価をしたい。恐らくこういった“闇”を描く物語はリアリティを追求すればするほど、現実社会をのうのうと

              生きている若者には現実離れしているように思えて、響かない作品になってしまうだろう。

               

               

               

              2018.05.21 Monday

              『アバウト・タイム 愛おしい時間について』元気に生きようと思える温かい映画

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                本作はラブ・アクチュアリーの監督であるリチャード・カーティスが製作した映画である。

                 

                主人公であるティムは冴えない青年で、両親と伯父、妹のキットカットと一緒に暮らしている。

                ニューイヤーパーティでは新年を迎えた瞬間に、周りの人々がみな異性とキスをして喜び合うなかで

                ティムだけは近くにいた女性に触れることもできず、居心地の悪そうな顔をして立ち尽くしていた

                 

                21歳の誕生日、ティムは父親に呼び出され、大切な話があると打ち明けられる。

                その内容は、我が家の男子は全員特殊な能力を持っている、というものだった。

                父親自身も、祖父も、そしてティムもタイムトラベル能力を持っていると言うのである。

                 

                暗い場所に閉じこもって両手で握り拳を作って、過去の戻りたい場所を強く念じれば

                その時に戻れるという。ちなみに、タイムトラベルできるのは過去だけで未来には行けない、とのこと。

                父親にからかわれていると感じたティムは、全く信じようとしないが、一度試してみるように諭され

                ニューイヤーパーティの日に戻ろうとする。

                 

                すると、なんと父親の言ったとおりに過去に戻ることに成功した

                ティムは今度こそ新年を迎えた瞬間に隣にいた女の子にキスをすることに成功する。

                女の子も満足げな表情でティムにお礼を言っており、素晴らしい気分でパーティを終えることができた。

                 

                現在に戻って、父親のもとに駆けつけたティムは興奮気味に成功したことを話す。

                父親はこの力を有効に使うように言うが、お金を得たいというティムをたしなめ、もっと有意義に使え

                と諭す。それを聞いたティムはこの力で愛を手に入れたいと思う、と伝え父親は大いに賛成する。

                 

                ティムは妹キットカットの恋人であるジミーの妹、シャーロットが夏休みの間遊びに来ていた時に

                恋をしていたのだが、何もできないまま終わっていた。夏休みをやり直したいと考えたティムは

                過去に戻って、シャーロットとの仲を深めようとするのだが、なかなか思い切れず、とうとう

                シャーロットが帰ってしまう最終日を迎えてしまう。

                 

                ティムは勇気を振り絞ってシャーロットに告白するが、タイミングが最悪だと言われてしまう。

                「なぜこんなに長い夏休みの間に全く言ってくれなかったの」と言われたティムはまた過去に遡って

                夏休み中盤に告白をするが、今度は「最終日に言って欲しかったわ」と言われてしまう。

                 

                落胆したティムはタイムトラベル能力で愛を手に入れることはできないと悟り、ロンドンに住む

                父親の友人である脚本家ハリーのもとで下宿し、弁護士として仕事を始めた。

                しかし、法曹界にいるのは男ばかりでティムに春が訪れる日は遠いように感じられた・・

                 

                ある日、ティムは悪友のジェイと暗闇で食事をするというレストランに出かけ、そこで出会った

                メアリーと話が弾んで意気投合する。ティムは外で会ってみたいと話し、メアリーはそれを受け入れる。

                外で顔を合わせてみるとメアリーはとても可愛い女性だった。連絡先を交換し、また会うことを約束する

                 

                ティムが家に帰ると、ハリーがとても不機嫌な様子で待っていた。今日は自身が脚本を書いた舞台の初日

                だったが、役者がクライマックスで台詞を忘れてしまったため、最高の脚本が台無しになってしまったと

                嘆いていた。ティムはタイムトラベル能力を使い、舞台を見に行って役者に忠告することで劇を成功に

                導いた

                 

                しかし、ティムは携帯電話を見て、メアリーの連絡先が無いことに気づく

                タイムトラベルしたことでその日出会うはずだったメアリーと出会わなかったことになって

                しまっていたのだ。

                 

                メアリーと話した時に、彼女がケイト・モスの大ファンだという話を聞いていたティムは

                妹のキットカットと共にケイト・モスの展示会に出かけ、そこでメアリーを見つけて興奮のあまり

                初対面であることを忘れて話しかける。

                 

                かなり怪しまれるが、妹の協力を得て、運良く展示会を一緒に回ることに成功する。

                しかし、食事を取る際にメアリーには彼氏がいることが判明する。二人が友人のパーティで

                出会ったことを強引に聞き出し、ティムは二人が出会った時にタイムトラベルで先回りし、

                彼氏となるはずだった男より前にメアリーと出会ってパーティから連れ出すことに成功する

                 

                その後二人はとても良い雰囲気でティムはメアリーを車まで送って行くことになるが

                道中でメアリーは車は家の前に置いてきたことを明かす。そして、メアリーの家に着いた二人は

                とうとう結ばれることになる。

                ちなみにティムはこの二人が結ばれた初夜を二度もやり直しており、合計三度も経験している

                 

                二人はその後も順調に仲を深めていき、同棲するようになる。同棲している家に急遽

                メアリーの両親が訪ねてくるなどのハプニングもありつつ、無事に顔合わせも済ませることができた。

                 

                そんなある日、ティムはメアリーを演劇に誘うが、好みではないと断られたため

                ティムはジェイと演劇を鑑賞しに出かける。そこでシャーロットと偶然の再会を果たす。

                彼女から積極的に言い寄られたティムはシャーロットの部屋の前まで行くが

                大切な用事がある、と言って断り、メアリーが待つ家に帰る

                 

                そして、その勢いのまま寝ぼけ眼のメアリーにプロポーズをするが、さすがに寝ている時に

                プロポーズは良くないとたしなめられ、タイムトラベルしてやり直すことにする。

                 

                今度はムーディな音楽をかけてしっとりとプロポーズをする。今度は無事にOKを貰い、

                メアリーは「サプライズじゃなくて良かったわ」と話す。

                ティムは「もちろんだよ、じゃあラジオを止めてくるね」と言いながら裏で生演奏をしていた

                バンドをこっそりと帰してしまう

                 

                ティムは家族にメアリーのことを紹介し、二人は無事結婚式を挙げる。

                結婚式の際のスピーチがイマイチだと感じたティムは何度もスピーチを頼む人を変えるために

                タイムトラベルを繰り返すが、最後は父に頼むことにし、内容に満足するが、なんと今度は

                父がスピーチに納得いかなかったと言ってスピーチをやり直すために過去に戻る

                 

                二人の間には娘ポージーが生まれ、幸せな生活を送っていた。

                そんな時、ポージーの1歳の誕生日の日にキットカットは酒酔い運転で事故を起こし

                大怪我を負ってしまった。酒酔い運転の原因は前日の恋人ジミーとの喧嘩だという。

                 

                キットカットとジミーの関係は望ましいものではないと考えたティムは

                キットカットと共にジミーが出会う前にタイムトラベルし、二人の出会いを無かったことにする。

                現在に戻ると、ジミーの恋人はなんとジェイになっていた。

                 

                しかし、家に戻ってポージーに会いに行くと、なんと子供がポージーとは違う子供になっていた。

                急いで父に相談すると、子供が生まれる前にタイムトラベルすると子供が変わってしまうため

                子供が生まれる前にはタイムトラベルできない、と話す。

                 

                そのため、キットカットが事故に遭うことは避けられないが、ティムはなんとか彼女の人生を

                良い方に持って行こうと骨を折り、とうとうジェイとキットカットが付き合うことになった。

                さらに、ティムとメアリーの間にも二人目の子供が誕生する。

                 

                何もかも上手くいったように見えたが、ティムの父が末期の癌に侵されていることが判明する

                父は過去に戻ってもどうにもならない、と話す。「煙草が原因だが、母は私の煙草を吸う姿が

                セクシーだといって惚れてくれたのさ」と言う。

                「今でも過去に戻れば何度も家族と過ごすことができる。」と続け、悲しまないように告げる。

                 

                父は最後に能力を使う二つの秘訣をティムに伝えた。

                父は毎日を普通に過ごすこと、そして毎日をもう一度同じようにやり直すことを勧めた。

                そうすると、始めはわからなかったことが見えてきて、日々の大切さを噛み締められるように

                なるという。

                 

                父の葬式が終わり、しばらく経ったころ、メアリーは三人目の子供が欲しいとティムに話す。

                ティムは新しく子供が生まれてしまうと、もうそれ以上過去に戻れず、父に会えなくなるため

                メアリーの提案に思い悩むが、とうとう子供を作ることを決意する。

                 

                そして、最後に父と会うためにタイムトラベルに出かける。

                父といつもの卓球勝負をした後、ティムの雰囲気から察した父は「これが最後なんだな」と言う。

                ティムはそれに応え、「最後に何かして欲しいことはないか」と訪ねる。

                 

                父は「ティムが子供の頃に戻って、もう一度二人で海辺を散歩したい」と話す。

                二人は未来を変えないように注意しながら過去をなぞるように二人で海辺を散歩をしながら

                最後の時間を過ごす。

                 

                その後、三人目の子供が生まれたティムとメアリーは日々を幸せに過ごしていた。

                そして、ティムは父親から教わった能力を使う二つの秘訣のさらに先の三つ目の秘訣を見つけた。

                 

                それは、能力を使わないことだった。

                毎日を能力によって戻ってきた二回目の今日だと思って、一度きりの一日を大切に過ごすことで、

                さらに日常の素晴らしさに気づくことができるというのだ。

                 

                〜感想〜

                ラブ・アクチュアリーと同じくリチャード・カーティスが監督脚本ということで、映画全体の

                完成度は言うまでもない。元気がない時や辛い時に何度も見返すような素敵な映画だと思う。

                 

                ジャンルとしてはSF恋愛映画になると思われるが、タイムトラベル能力はあくまで小道具に過ぎず

                映画の中でもギャグシーンのような場面で使われていることが多い。

                特にメアリーとの最初のベッドシーンを何度もやり直す下りは非常にコミカルで面白い。

                 

                だが、そういった印象すらも伏線と言ってもいいのか、最後にはタイムトラベル能力を使わないこと

                こそが最も幸せであるという真理に辿り着くことができる。

                実際にメアリーとの出会いもタイムトラベルによって失われたものを取り戻すために能力を

                使っただけなので、始めから能力を全く使わなかったとしても二人の間の結果は同じであろう。

                 

                役者や役柄の印象としてはメアリー役の女優レイチェル・マクアダムスが本当にキュートな演技を

                見せてくれていた。また、ティムもパッとしないがとても誠実で優しい人柄が良く描かれていて

                二人の幸せを応援したくなる気分になる。

                 

                特にあまり仲が良いとは言えない関係の同居人の脚本家のために過去をやり直したことで

                メアリーとの出会いが失われたにも関わらずその過去をやり直そうとはせず、自力でもう一度

                メアリーと出会おうとしたところなどは非常に印象的だった

                 

                この映画は、ありきたりな感想になってしまうが、笑って泣けて、明日から前向きに生きていこう

                と思える素晴らしい娯楽としての珠玉のエンターテイメントだった。

                 

                2018.05.18 Friday

                『オーケストラ!』はちゃめちゃオーケストラが巻き起こす奇跡

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                  本作は2009年公開のオーケストラをテーマに描いたフランス映画である。

                   

                  かつてはロシア・ボリショイ交響楽団で天才指揮者を勤めていたアンドレイだが

                  ある事件以降、楽団の清掃員として働いている。本作はそのアンドレイが

                  ボリショイ楽団宛に、パリにあるシャトレ座からFAXで来た公演依頼を盗み見たことから始まる。

                   

                  アンドレイはそのFAXを隠匿し、ボリショイ交響楽団に成りすましてシャトレ座で公演すること

                  思いつき、かつての仲間であるサーシャに相談を持ちかける。

                   

                  なお、ある事件とは、楽団からユダヤ人を排斥しようとする共産党の動きがあり

                  それに対してアンドレイは優秀な楽団員が失われることを危惧し、抗議の意味を込めて

                  チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の公演を強行しようとする

                   

                  しかし、その時に当時楽団のマネージャーであった熱心な共産党員であるイワンは

                  演奏中に割って入り、最高のハーモニーを途中で中断させてしまう

                  その後、楽団員は散り散りになってしまい、皆の心に影を落とすことになった。

                   

                  アンドレイが楽団員を集めるために、イワンに相談を持ちかけるべきだ、と言ったが

                  サーシャは「過去のことを忘れたのか!」と猛反対する。

                  だが、アンドレイは彼は最高のマネージャーだ、と言って強引に相談に行く。

                   

                  サーシャとイワンは一触即発の状態で交渉は難航すると思われたが

                  イワンは公演がパリで行われると聞き、なんと二つ返事でOKする

                  裏があるのではないかと疑うアンドレイとサーシャだったが、イワンはそんなものはない、と言う。

                   

                  まずは、シャトレ座との交渉を済ませ、報酬等の条件と曲目をチャイコフスキーの

                  ヴァイオリン協奏曲にすること等を先方に伝えることに成功した。

                  そこからかつての仲間達を巡り、楽団員を集める道中が始まる。

                   

                  この場面では、現在は様々な職についている人々との再会が描かれるのだが

                  アダルトビデオの吹き替えを監督している者がいたり、中には遊牧民として暮らしている者も

                  いて、ヴァイオリンを器用に操りながら賑やかな音を奏でて部族みんなで踊り出す場面など、

                  フランス映画らしくコミカルに描かれている。

                   

                  アンドレイはヴァイオリン協奏曲のソリストにパリ在住の一流女性ヴァイオリニスト

                  アンヌ=マリー・ジャケを指名し、マリーは海外公演中の多忙な期間にも関わらず

                  かつての一流指揮者であるアンドレイが指揮をすると聞き、どんな条件でも受けると伝えて欲しい

                  と代理人であるギレーヌという女性に申しつける。

                   

                  そして、様々な困難を乗り越えた後にとうとうパリに辿り着くのだが、リハーサル当日には

                  楽団員はみんなパリで自由を謳歌していて、会場にはほとんどの楽団員が現れず

                  マリーは意気消沈してしまう。

                   

                  ここで楽団員達はそれぞれにパリで白タクをやってみたり、翻訳者として働いてみたり、ロシアから

                  持ち込んだキャビアを飲食店に売り込もうとしたり、中国産の携帯電話を売り捌こうとしたり

                  (税関をすり抜けるために楽団員全員に1つずつ持たせて持ち込んでいる)、様々な方法で

                  金を稼ごうとしていて、商魂逞しいユダヤ人の気質をコミカルに描いている

                   

                  マリーはアンドレイを食事に誘い、何故自分をソリストに選んだのかを聞こうとする。

                  アンドレイは、かつて自分の楽団にいた才能溢れるユダヤ人のヴァイオリニストであるレアという女性

                  について話し始めるが、何か隠し事をしているようで歯切れが悪い。

                   

                  結局、核心には触れないまま、かつて起きた事件のこと、その時に最高の演奏を

                  完成させられなかったことについて悔やんでいることを伝えるが、マリーは

                  私はレアの代わりにはなれない」と言い、翌日の公演を中止するように進言してその場を去る。

                   

                  そもそもアンドレイは何を隠しているのだろうか。彼の持ち物の中にはマリーのCDが大量にあり

                  それを見たサーシャは「まさかあの子なのか?此処には演奏をしに来たんだよな?」と言う。

                  アンドレイとサーシャはマリーの代理人であるギレーヌとも面識があるようで、ギレーヌからも

                  「彼女に何か話すつもりはないわよね?」と釘を刺される場面がある。

                   

                  そしてコンサート当日に、楽団員達は「レアのために戻ってこい」という携帯電話へのメッセージを見て

                  滑り込みで全員が会場に勢揃いする。とうとう大観衆の前で演奏が始まるが、どこか調子外れで聴衆も

                  顔を見合わせてしまう。

                   

                  しかし、最初のマリーのソロが始まると徐々に全員が一丸となって素晴らしい演奏へと昇華していく

                  感動的な演奏の続くなか、アンドレイの独白が演奏に被せられ、マリーに関する衝撃の真実が明らかになる

                  なおも演奏は続き、その途中で様々な映像が差し込まれる。

                   

                  アンドレイの交響楽団が好評につき、世界中で追加公演を決定したこと、

                  ロンドン、ベルリン、北京、日本、シドニー等を周り、各地の新聞でその成功が伝えられた様子、

                  アンドレイが家でマリーと親しげに話している様子などが代わる代わる映し出される。

                   

                  そうして、物語と共に演奏はクライマックスに向かっていき、至上の演奏が終了したとき

                  観客席は総立ちで拍手を送り、壇上に花を投げ入れた。

                  アンドレイの胸で涙を流すマリーの顔が映し出され、物語は幕を閉じる

                   

                  〜感想〜

                   

                  ロシアの交響楽団について描かれた映画ということだったが、随所の小ネタなどに

                  フランス映画らしい部分を感じた。

                   

                  物語の本筋はシンプルだが、一捻りが加えられており、ストーリーも素晴らしいものと言えるだろう。

                  特に最後のオーケストラによる演奏場面は圧巻である

                   

                  音楽モノの映画では最後に大団円の演奏シーンがあるのはお決まりと言っても良いが

                  クラシックの場合は1曲が長く、曲のなかでもストーリーがあるため、どのように表現するのか

                  気になっていたが(事実、最後の演奏シーンは12分に渡る)、演奏シーンに被せて物語の核心や

                  後日談などを映像で表現するという演出は非常に秀逸と感じた

                   

                  映画全体で見ると、シリアスな部分もあるが、根底には明るさが常に感じられるようになっており

                  鑑賞後には温かい気持ちになれるような、爽やかな感動を与えてくれる映画であった。

                  2018.05.16 Wednesday

                  『手紙は憶えている』ナチス兵への復讐を誓った男が辿り着く真実とは

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                    本作「手紙は憶えている」の原題は「remember」であるようだ。

                    主人公のゼヴは90歳の老人で認知症を患っている。最愛の妻ルースは亡くなってしまっているが

                    そのことさえも忘れてしまうことがある。彼は老人ホームに入居しているが、そこにいる友人マックス

                    からルースが亡くなった時に誓った三人の約束を憶えているか、と問われる。

                     

                    ゼヴは憶えていない、というが、ルースが忘れても大丈夫なように手紙に書き記した、と告げ

                    身体の不自由なマックスの代わりに、ゼヴはその内容に従って人捜しの旅に出る。

                    後ほど明らかになるが、手紙によるとゼヴとマックスはアウシュビッツ収容所の生存者で

                    彼らの家族は全て収容所で殺されてしまったという。

                     

                    さらに、収容所で自分たちの家族を殺したナチスの兵士はルディ・コランダーという偽名を使って

                    今も裁かれずに逃げ続けているという。その名を持つ容疑者は4人。ゼヴは復讐を果たすため

                    順番に一人目、二人目、とルディ・コランダーに会っていく。

                     

                    一人目は、当時アウシュビッツにはおらず、その時はアフリカで作戦に従事していた、と証言し

                    その証拠として当時の部隊のワッペンを見せる。

                     

                    二人目は、なんとアウシュビッツにいたというが、銃口を向けたその瞬間、左腕の囚人番号がゼヴの目に入る。

                    彼はアウシュビッツで囚われていた囚人だったのだ。ゼヴは涙を流し「すまなかった、許してくれ」と請う。

                     

                    三人目のルディ・コランダーを訪ねると、既に亡くなっていた。そのことを教えてくれた息子に家に誘われ

                    話を聞くと、父親は戦争時の物品のコレクターだったと言い、コレクションを見せてくれることになる。

                    亡くなった父親の部屋にはハーケンクロイツの旗が掲げられており、ナチの信仰者だったことがわかる。

                     

                    疑いを深めたゼヴは更に詳しい話を聞こうとするが、父親はアウシュビッツでは働いておらず

                    ドイツ軍の料理人をしていただけだと言う。話を聞いたゼヴは「人違いだった」と言い、去ろうとするが

                    言動が不自然なことを咎められ、左腕の囚人番号が見つかってしまう。

                     

                    「汚らしいユダヤ人が!俺を騙しやがって!」と激高した息子に飼っている犬をけしかけられ、襲われそうに

                    なったゼヴは復讐用の銃で犬を撃ち殺してしまう。さらに、銃を取ろうとした息子にまでも発砲し

                    とうとう撃ち殺してしまった。

                     

                    その後、ゼヴは記憶を失うが、現場の状況を見て自分が殺してしまったことを知覚する。

                    しかし、必ずこの手で復讐を終わらせる、と誓い、四人目の男を捜しに旅を続ける。

                     

                    四人目の男は、家族と孫と平和に暮らしていた。本人はまだ眠っているというので

                    ゼヴは家に招き入れてもらい、置いてあったピアノでワーグナーの曲を演奏しながら待つことにした。

                    起きてきたルディ・コランダーに「収容所にいたのならワーグナーは嫌いだろう」と問われるが

                    ゼヴは「音楽は関係ないさ」と返す。

                     

                    そして、ゼヴが話をしようとすると、家族に聞かれたくないから外で話そう、と言われ

                    二人で家の外に出て行く。彼は真実を話そうとせず、とうとう業を煮やしたゼヴは

                    彼の孫娘に銃を突きつけて真実を語らなければ彼女を殺す、と脅す。

                     

                    そして、四人目のルディ・コランダーはアウシュビッツ収容所にいたが、捕虜ではなくナチス軍だったことを

                    家族の前で話し、大勢の人間を殺したことを自白する。

                    しかし、隠されていた真実はそれだけではなかった。さらにもう一つ、驚きの真実がその場で明らかになる・・

                     

                    ゼヴは最後にこう言った。

                    「I remember.」

                     

                    〜感想〜

                     

                    オチについてはあまり言及しないことにするが、アウシュビッツ収容所というテーマを扱う理由が

                    あったのかはイマイチ釈然としない。正面から扱う場合にはあまりにも重すぎる映画となってしまうため

                    歴史は深掘りしすぎない程度の方が物語の本筋に影響を与えないのであろうが・・

                     

                    ナチスの信奉者らしき人間も登場するが、あくまで「ユダヤ人が嫌い」だという程度の思想しか感じられず

                    ネオナチのような極端なイデオロギーを持っていたわけではなかった。

                     

                    では、思想をメインに描く映画ではないとするならば、物語の構成が非常に優れていたかというと、

                    残念ながら凡庸であったと言わざるを得ないだろう。四人の男を順番に追いかけ、最後にオチがある、

                    といってもある程度予想できる範疇となってしまうし、そこに至るまでの道中は正直なところ退屈である。

                     

                     

                     

                     

                     

                    2018.05.14 Monday

                    『ロレンツォのオイル』ある夫婦の息子への愛が実現した偉業

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                      本作は、難病である副腎白質ジストロフィー(ALD)を患った息子ロレンツォのために奮闘した夫オーギュストと

                      妻ミケーラのオドーネ夫妻を描いた実話に基づく物語である。

                       

                      ロレンツォはある時から神経過敏になってしまい、学校で突然暴れだすなどの問題行動を起こすようになる。

                      夫妻は原因がわからず困惑するが、いくつかの病院を訪ね、精密検査の結果、ALDであると診断を受ける。

                      病気の原因は通常なら分解される長鎖脂肪酸が、分解されず脳に蓄積され、その結果、脳のミエリンという部分が

                      破壊されること、だという。治療法もなく、同じ症例の子供は二年以内に100%亡くなっていると告げる。

                       

                      夫妻は他にも同じ症例の子供達がいるのならば、病気の研究は進んでいるのではないか、と食い下がるが

                      医者は10年前にはこの病気は発見されてすらいなかった、研究はまだこれからの段階である、と言う。

                      絶望の淵に突き落とされる夫妻だが、なんとかこの病気に関する研究の第一人者の医者を紹介してもらい、訪ねる。

                       

                      この病気の原因は、健常者であれば持っているはずの長鎖脂肪酸を分解する酵素を持たないことであり

                      それは母から遺伝により受け継がれる形質だというが、女性は発症せず、5〜10歳の男児のみ発症するとのこと。

                      そのため、実験段階ではあるが、原因となっている長鎖脂肪酸を含む食事を制限する療法があると言い

                      夫妻はその療法を試すことにする。

                       

                      6週間後、血液検査の結果を見ると血液中に含まれる長鎖脂肪酸の値は下がるどころかむしろ上昇していた。

                      夫妻は医者に電話し、全く効果が見られないと責めるが、医者はこの実験は6ヶ月継続することが重要だと説き

                      他の免疫抑制療法などもあるが、非常にリスクが高く、今現在は普通に会話ができているロレンツォには

                      勧められない、と告げる。

                       

                      しかし、夫妻はわずかでも息子が治る可能性があるのであれば、それに賭けたいと言いロレンツォに

                      免疫抑制療法を受けさせることにする。

                      だが、一ヶ月後、ロレンツォの症状は全く改善が見られず、会話も辿々しくどもりがちになってしまっていた

                       

                      オドーネ夫妻は、ALD患者の家族の会の会長から会への参加を勧められ、集まりに参加する。

                      そのセミナーのなかで壇上の講演者から食事療法のメニュー考案等ができないか、という提案があった際に

                      ミケーラは「息子は食事療法を続けているが、数値はむしろ増加している。メニューを考える前に

                      有効な治療方法を模索するべきではないか」と発言する。

                       

                      他の親からも自分の子供も数値が増加していて、この療法には効果がない、という声が上がる。

                      しかし、基金を運営する支援団体の会長夫妻は「医療は医者に任せるべきで、医学というのは

                      6ヶ月間の正確なデータの計測が必要であり、まだ現時点では正確なことはわからない」と言い、

                      強引に次の講演者に場を繋いでしまう。

                       

                      夫妻は医者もこの病気について何もわかっていないことを理解し、自分たちでロレンツォを救う道を

                      探すことを決める。医者は医学の専門家かも知れないが、生化学や神経学、その他学問の専門家ではなく

                      自分たちも息子の病気と闘うためにはそれらの知識を身につけるべきだと考える。

                       

                      そして、夫妻の図書館に通い文献を読み漁る日々が始まった。

                      そのうち、ラットの動物実験において、食事制限をするのではなく、害の少ない種類の脂肪酸をあえて摂取する

                      ことで、身体が生合成する脂肪酸の量が減った、という実験結果を発見する。

                       

                      この結果を受けて、様々な学問の専門家は自身の学問分野には詳しいが、他の分野に関する知識も横串を通して

                      検討する必要性を感じる。医者に相談したところ、シンポジウムを開催するのが最も有用であろうと助言され

                      夫妻は協賛者や資金集めに奔走する。

                       

                      ALD患者の基金を運営している家族の会に真っ先に相談するが、にべもなく断られてしまう。

                      だが、その他の協賛者を得ることができ、無事にシンポジウムは開催される。

                      そのシンポジウムの場で、ある研究者からオレイン酸にALD患者の細胞を漬けたところ

                      数値の改善が見られた、との発言を得ることができた。

                       

                      しかし、実際に臨床で使用するほどのオレイン酸は入手ができない、とその研究者は言うが

                      夫妻は幾つもの製薬会社に問い合わせ、とうとう産業用にオレイン酸の抽出を行っている工場を探し当てる

                      オイルを入手した夫妻は、すぐにロレンツォへの投与を開始する。

                       

                      1ヶ月後の検査結果では15%の数値の低下が見られたが、医学的には自然変動の範囲であると告げられる。

                      だが、2ヶ月後の検査ではなんと50%もの低下が見られたのだ。これは劇的な成果であり、夫妻は医者に

                      この内容を告げるが、現時点では一つの症例のみでまだ断定的な行動を起こすことはできない、と言われる。

                       

                      夫妻は他にも戦っている家族がいることから、家族の会と連絡を取り、ALD患者の家族に対して

                      今回のロレンツォの結果について他の家族に報告する文書を送付したい、と申し出るが

                      またも頑なに拒否される。夫妻は他の家族の知る権利を阻害するのか、と感情的になりながら抗議をする

                       

                      家族の会の答えは「我々は患者の家族の心理的負担等をケアするのが役目で、医療は医者に任せるべき」という

                      ものだった。さらに「我々はこの病気で子供を二人失ったが、一人目はすぐに逝くことになってまだ幸せだったが、

                      二人目は三年も苦しみ、そのうち二年は失明し、光を失ったままだったんだ」と続け、無闇に希望を持たせること

                      は更に悲しみを深くしてしまうため、我々は賛成できない、と告げた。

                       

                      夫妻は失意のまま3ヶ月後の検査結果を得るが、数値は2ヶ月目に50%低下したところからほとんど変化がなかった。

                      ロレンツォの症状も改善せず、夫妻は徐々に精神状態も不安定になっていく。

                      果たしてロレンツォはこのまま苦しみ続けることを望んでいるのだろうか、夫妻の心に不安がよぎる。

                       

                      献身的にロレンツォの世話をしてくれているナースやミケーラの妹との関係も長引く介護生活によって

                      少しずつ亀裂が入り始める。何より夫妻の精神はもう限界に近かった。しかし、夫妻は決して諦めず

                      更なる改善を求めて新陳代謝に関する文献をひたすら読み解いていく。

                       

                      すると、ラットの長鎖脂肪酸の生合成を抑える実験に関する研究結果を発見する

                      原因となっている長鎖脂肪酸の性質により近い脂肪酸を外部から投与することにより、身体内部での合成が

                      抑えられるという。

                       

                      この研究結果をもとに、有用な脂肪酸はエルカ酸であると導きだし、これを投与することで効果が見られるのでは

                      ないか、という仮説を立て、医者に相談をする。医者は非常に期待できる研究結果だと言うが、肝心の成分について

                      アメリカ国内においては人体に有害であることを示すエビデンスが数多くあり、認可は難しいだろうと告げる。

                       

                      夫妻は、エルカ酸は海外の国や地域によっては日常生活で摂取されている菜種油の主成分であることから

                      国内は無理でも国外に活路がないか、必死で研究者を探そうとする。

                      前回協力してくれた製薬会社のつてを辿り、何とか一人の研究者が協力を約束してくれることになった

                       

                      完成したオイルをロレンツォに投与すると、なんと長鎖脂肪酸の値が正常値にまで戻ったのである。

                      破壊された脳の神経部分が回復するわけではないが、症状は徐々に改善し、なんとか小指を動かすことができる

                      程度にまで回復し、簡単な意思疎通ができるようになった

                       

                      夫妻は更に、破壊された脳のミエリンを修復する方法がないかを模索し、同じ症状の犬に対して

                      ミエリンを修復する研究を進めている研究者を発見し、共同研究者や研究への出資者を集めて

                      研究のスピードを加速させることにチャレンジしようとする・・

                       

                      本作品の物語はここで幕を閉じるが、映画公開時点でロレンツォの病状はさらに回復していることが伝えられる。

                       

                      〜感想〜

                       

                      まず、全く専門外の夫妻が息子が難病を患ったことにより、専門家でさえも気づかない事実に

                      執念で辿り着いたという偉業に対し、素直に敬意を表したい。

                      また、その事実を知るきっかけになったこの映画についても、その点において賛辞を送りたい。

                       

                      いわゆる“研究者”という人種はどうしても深い専門性を追求することが目的となるため、全く異分野の

                      研究にまで知見を深めることは不可能であろう。もちろん医学においても同様で、たった一つの病気について

                      異分野の研究も含めた、ありとあらゆる角度から調べ尽くすことは難しいであろう。

                       

                      しかしながら、それでもこの夫妻は並大抵ではない精神と熱意の持ち主であったがゆえに、このような偉業を

                      成し遂げられたのであろう。医者の言うことを鵜呑みにせず、息子のために何かできることがないか限界まで

                      調べ尽くし、それでも見つからない場合には一から学問を学び直してでも新たな治療法を模索する、そんなことが

                      できる人間は本当に僅か一握りしかいないだろう。

                       

                      だが、この夫妻はそれを成し遂げたのである。

                      人間の限界などというものは果たして、激しい情熱や衝動の前では存在しないのではないかと思える。

                      医者が匙を投げるとはよく言ったものだが、諦めなければそれでも未来が開かれることは間違いなくあるのだ。

                       

                       

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